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更新日:2026/7/27

【相談援助のコツ】「子どもがプリントを出さない」ケースへの具体的な会話例

著者:浜内彩乃

/臨床心理士・公認心理師

「子どもがプリントを提出してくれない」という相談への受け答えに悩むことはありませんか? 今回は、アセスメントや具体的な会話の進め方のポイントを、臨床心理士・公認心理師の浜内彩乃先生に解説していただきました。

  • 目次

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    浜内先生解説記事はこちら

    1.学童期の子どもの保護者からよくある相談

    放課後等デイサービスでは、保護者の方から「うちの子、学校からもらってくるプリントを出してくれないんです。ランドセルの奥でクシャクシャになっていて…」という相談を受けたことがあると思います。

    特に、プリントの配布やお知らせが増える学童期(小学校低学年~高学年)の子どもの保護者からは、この相談が非常に多く寄せられます。保護者の方は、「学校の大切な行事を逃してしまう」「学校の様子がまったわからない」という不安を感じており、日々の親子関係にまで影響を及ぼすこともあります。

    ここで重要な支援者の視点は、「出せない理由がある」という観点からアセスメントを行うことです。次項からは、「保護者と支援者の会話例」を交えながら、相談援助の進め方を四段階に分けてご説明していきます。

    2.【相談援助の第一段階】保護者の困惑と不安を受け止める

    保護者

    うちの子、学校からプリントをもらってくるのに出してくれないんですよ。「プリント、ある?」って聞くと、「あ、ランドセルに入ってた」と後から出してくるんです。このまま大事なお知らせを見落としたらどうしようって…

    支援者

    そうですか。それは心配ですよね。お母さんが「大事なお知らせを見落とすかもしれない」と思うのは当然だと思います。

    ●支援者が行っていることの解説

    支援者は、まず保護者の気持ちを「当然のもの」として受け止めています。つまり、「その心配は間違っていない」というメッセージを伝えているのです。
    この段階で重要なのは、支援者が保護者を責めたり、「それくらい大したことじゃない」と決めつけたりしないことです。

    保護者

    ですよね。それでつい、「何で出さないのよ」って怒っちゃって…。怒っても変わらないことはわかってるんですけど、どう接したらいいのか迷っていて…

    支援者

    つい怒ってしまうお気持ちもよくわかります。心配だから、つい強い言葉になっちゃうんですよね。

    ●支援者が行っていることの解説

    保護者自身が「怒っていること」を自覚し、不適切な対応であることに気づいていることがわかります。「保護者が自分を責める」のではなく、「プリントを出さない理由を一緒に探ろう」という前向きな姿勢へ移行できるようにしています。

    3.【相談援助の第二段階】「プリントを出さない」という現象を、具体的に把握する

    ここからが、本格的なアセスメントの開始です。支援者は、「プリントを出してくれない」という曖昧な表現を、より具体的な情報に変えていきます。

    支援者

    お子さんが「プリントを出さない」という場面について、具体的にお聞きしたいです。たとえば…

    ●支援者が行っていることの解説

    保護者が「1つの正解しかない」と思い込むのを避けさせるため、支援者はここで「複数のパターンがある」という前置きをしています。
    実際には、「プリントを出さない」という現象は、複数の異なる背景から生じる可能性があります。支援者がこの点を示すことで、保護者は「うちの子はどのパターンなのか」という視点で、自身の子どもを客観的に観察できるようになります。

    支援者

    たとえば、①ランドセルのなかにプリントがあるのに、そもそも「ある」ことに気づいていない、②プリントはあるけど、「ママに出す」ことを忘れている、③プリントはあって出すことも覚えているけど、「出したくない」と思って隠している、④プリント自体は見たけど、どこかに置いてしまって見つからない、みたいなパターンです。

    保護者

    なるほど。では、うちの子はどれなのか…

    支援者

    「プリント、ある?」と聞いたときに、どういう反応をしますか? たとえば、「えっ?」という感じでそれまで気づいていなかったのか、それともぼんやりとしているのか、「あ、やばい、隠してた」という感じで出てくるのか…

    ●支援者が行っていることの解説

    支援者は、子どもの「反応」から、その子がどのパターンに当てはまるのかを判断しようとしています。
    
    ・「えっ?」という反応 → 子どもが「プリントがある」ことに気づいていなかった可能性が高い(パターン①)
    
    ・ぼんやりとしている → 「出すこと自体を忘れていた」可能性が高い(パターン②)
    
    ・「あ、やばい、隠してた」という反応 → 子どもが「出したくない」という意図的な行動をしていた可能性が高い(パターン③)

    保護者

    「えっ?」みたいな反応で、「あ、ランドセル見てくるね」と言って持ってくる感じです。

    ■支援者が確認した情報
    • 子どもは「プリントがある」ことに気づいていなかった

    • 子どもは意図的には隠していない

    • 親が「ある?」と聞いてはじめて、子どもが探しに行く行動が起こった


    ●支援者が行っていることの解説

    この情報から、支援者は「この子はわざと隠しているのではなく、ランドセルにプリントがあることに気づいていない」「そもそもプリントの存在を認識していない可能性が高い」と判断します。
    もし子どもが「わざと隠している」のであれば、親子関係や子どもの心理面でのアプローチが必要ですが、「気づいていない」のであれば、子どもの「認識」や「注意」の問題であり、環境設定や視覚支援の工夫が有効です。

    支援者

    お子さんからのプリントは、どういう状態で出てきますか? たとえば、きちんと折られた状態なのか、それともクシャクシャになっていたり、ランドセルの底に埋もれていたりするのか…

    ●支援者が行っていることの解説

    ここで支援者は、非常に細かい「観察」を保護者に促しています。プリントの「状態」から、子どもの頭のなかを推測していきます。
    
    ・クシャクシャ → 子どもが乱雑に入れている、または注意散漫に扱っている可能性(注意の持続・切り替えの困難さ)
    
    ・ランドセルの底に埋もれている → 子どもがランドセル内を整理していない、または視覚的に「ある」ことに気づきにくい環境になっている可能性(整理整頓スキルの未熟さ、視認性の問題)
    
    ・きちんと折られている → プリントをもらった直後の対応はしたが、その後「持ち帰る」という流れが止まった可能性(ワーキングメモリの困難さ)

    保護者

    ほとんどクシャクシャです。ランドセルのなかは結構ぐちゃぐちゃなんですよ。プリントが埋もれてます。

    ●支援者が行っていることの解説

    これらの情報から、単なる「子どもの忘れっぽさ」ではなく、「ランドセル管理」「注意の持続」「整理整頓スキル」など、複数の要素がからんでいることが示唆されました。

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    4.【相談援助の第三段階】子どもの発達特性と学年を確認する

    支援者

    今、何年生ですか?

    保護者

    2年生です。

    ●支援者が行っていることの解説
    • 低学年(1~3年):「忘れる」ことが主流であり、先生の声かけで改善しやすい段階

    • 中学年~高学年(4~6年):「隠す・出さない」ことが増え、心理的抵抗が強くなる段階

    2年生の場合はまだ「忘れる」段階であり、「わざと隠している」可能性は相対的に低いはずです。

    支援者

    2年生ですか。そうすると、まだ「提出・持ち帰り」という概念が十分に定着していないのかもしれませんね。それくらいの年齢だと、「先生から言われたことを覚える」「複数のステップを記憶する」のがまだ難しい子も多いんです。

    保護者

    あ、確かにそんな感じです。「プリントを持ってきて」って言っても、「あ、忘れてた」みたいな…

    支援者

    そうですよね。学校生活全般で、「忘れ物」や「注意散漫」という傾向は見られますか? たとえば、「今日のプリントを出すのを何度も忘れる」だけじゃなく、「上履きや宿題を忘れた」とか…

    ●支援者が行っていることの解説

    ここで支援者は、「プリントを出さない」という限定的な問題から、より広い視点の質問へと広げています。「プリントを出さないだけ」なのか、「全般的に忘れ物や注意散漫がある」のかで、その子の問題の本質を見極めます。
    
    ・「全般的に忘れ物が多い」のなら → その子に「注意散漫」や「ワーキングメモリの弱さ」がある可能性が高い
    
    ・「プリントだけを出さない」のなら → 「プリントに対する心理的抵抗」や「プリント特有の問題」がある可能性が高い

    保護者

    プリントだけじゃなくて、「上履きや宿題を忘れた」とかいっぱいあります。本当に「忘れっぽい子」です。

    ●支援者が行っていることの解説

    「学校でプリントをもらう → ランドセルに入れる → 家に持ち帰る → 親に出す」という一連のステップを実行するためには、ワーキングメモリが機能する必要があります。もしワーキングメモリが弱ければ、このステップのどこかで「記憶」が失われてしまい、「あ、プリントあったっけ?」となります。

    「ワーキングメモリ」の解説記事:
    【児発・放デイ】ワーキングメモリとは? —学習・生活への影響など、保護者支援に活かせる基礎知識を解説

    5.【相談援助の第四段階】学校での様子と教員との連携を確認する

    支援者

    お子さんは、学校で先生からプリントをもらうときにどういう様子ですか? 「プリントをもらって、ランドセルに入れる」という流れで何か課題があると思いますか?

    保護者

    実は、学校の先生から「配布されるときにぼーっとしていることがある」と指摘されたことがあります。

    ■支援者が確認した情報
    • 学校の先生が「ぼーっとしている」姿を観察している

    • つまり、プリント配布時に、子どもの注意が散漫である可能性がある

    • 子どもがプリントをもらった時点で、注意が向かっていない可能性がある


    支援者が行っていることの解説

    プリント管理の破綻は、「学校でプリントをもらった時点ですでに起こっている可能性」が出てきました。子どもが注意散漫のままプリントをもらっているので、その時点で「ランドセルに入れる」という指示が、子どもの頭に入っていない可能性があります。

    支援者

    そうですか。先生は、プリント配布時にお子さんに個別に声をかけられていますか? たとえば、「〇〇さん、これプリントです。ランドセルに入れてね」みたいな…

    保護者

    そこまでは…聞いたことないですね。

    支援者

    では、まずはお母さんの困り感をお伝えしたうえで、学校の先生に「学校ではどのような声かけをされていますか」と聞いてみるのはいかがでしょうか。

    ●支援者が行っていることの解説

    保護者の不安や困り感を学校と共有するのは大切なことです。また、すでに学校が何らかの対応をしている場合がありますが、その対応が合っていないのか、または何も対応されていないのかによって、次に検討する対策が異なります。

    支援者

    お子さんが学校から帰ってきたとき、どういうルーティンをしていますか? たとえば、帰ってきたらすぐランドセルを確認するとか…

    保護者

    実は、特にないんです。帰ってくるとすぐ「おやつ食べたい」と言ったり、友達と遊びたいと言ったり…。プリントの確認は、「あ、そっか」って思い出したときに聞く感じです。

    支援者が行っていることの解説

    学校だけでなく、家庭でも対処できることがないかを検討します。ワーキングメモリが弱い子どもは、「習慣」や「ルーティン」がないと、行動が定着しません。つまり、「プリント確認」が「毎日、帰ってきたらすぐやることリストの1番目」という位置づけがなければ、子どもの脳は「あ、プリント」と思い出す機会がないのです。

    支援者

    では、「帰宅 → プリント確認 → 親に提出」という流れを、毎日のルーティンにしてみてはどうでしょうか? 毎日の声かけは大変ですかね…

    保護者

    そうですね…。私のほうが忘れてしまうかもしれません…

    支援者

    確かに、お母さんが忘れることもありますよね。では、玄関に入ってすぐ目に入るところに「ランドセルを開けてプリントを取り出しているイラスト」を貼るのはどうでしょう? 一緒にイラストを探してみましょうか?

    保護者

    ああ、それなら私も忘れないかもしれません。子どもが帰ってきたら、玄関で出迎えるようにしているので。

    支援者が行っていることの解説

    保護者が、「それならやれそう」と思う内容を見つけることが大切です。今回の例では、支援者が具体的な方法を提案していますが、「ルーティーンができると行動が定着しやすいのですが、どのような内容だと促しやすいでしょうか?」と、保護者に方法を考えてもらうことも有効です。考えてもらった結果、「わからないです」と困った様子があれば、「こんな方法をとっている保護者がいますよ」と、具体例を提案してもよいでしょう。

    6.「プリントの未提出事例」から見える、支援者の本当の役割

    学童期の「プリントの未提出」は、一見すると「単なる忘れ物」のように見えます。しかし、支援者がこれを丁寧にアセスメントすることで、以下のようなより深い「子どもの発達課題」が見えてきます。

    1. ワーキングメモリの弱さ

    2. 実行機能全体の課題

    3. 注意散漫という特性

    4. 複数のステップを記憶・実行する難しさ


    支援者の重要な役割は、単に「プリントの未提出を解決する対応方法」を提案することではなく、以下のことになります。

    1. 保護者の「子どもへの理解」を転換すること(「子どもがわるい」から「子どもに特性がある」へ)

    2. 保護者の「心理的な負担」を軽くすること(自責のループから解放する)

    3. 保護者に「サポートする力がある」ことを認識させること(エンパワーメント)

    4. 学校の先生との「協力関係」を構築すること

    7.相談援助やアセスメントの質を高めるには?

    (執筆:発達ナビ編集部)

    以上、「子どもがプリントを提出してくれない」ケースへの具体的な会話例のポイントを浜内先生に解説していただきました。

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  • 著者:浜内彩乃

    臨床心理士・公認心理師

    「大阪・京都こころの発達研究所 葉」代表、京都光華大学看護福祉リハビリテーション学部准教授。臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士などを保有。著書は『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』(ソシム)など多数。

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