更新日:2026/3/23
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、保護者の方から相談を受けた際、「どう答えたらいいのか」「いまの支援でよいのか」と悩む場面があるでしょう。実は、相談援助のカギは、子どもの行動の背景にある「なぜ」を正確に理解する「アセスメント」にあります。この記事では、効果的な相談援助を行うための基本とコツを、臨床心理士・公認心理師の浜内彩乃先生に解説していただきました。
【この記事のポイント】
相談援助の基本:児童発達支援や放課後等デイサービスでは、支援の一連の流れを保護者と共有することが基本。
アセスメントの要点:子どもの行動の背景にある「なぜ」を多角的に分析。主観ではなく、情報に基づき「なぜ」の答えを推測する。
組織的な体制整備:丁寧なアセスメントのためには、支援者が学べる環境と心理的にサポートされる環境の両方が大切。
児童発達支援や放課後等デイサービスでまず理解しておきたいのは、保護者の方との相談援助は、限られた場面だけで行われるわけではないということです。
「見学に来られたとき」「個別支援計画を立てるとき」「普段の送迎のとき」「急な相談を受けたとき」「モニタリングのとき」など、様々な場面で行われています。これらの場面は、「関わる時間の長さ」によって以下のように分類できます。
送迎時の情報交換がここに該当します。この場面では、保護者の方との信頼関係を築くための「関係づくり」と、子どもや家庭の課題を発見する「ニーズの発見」に重点を置きます。限られた時間のなかでも、保護者の方の声に丁寧に耳を傾けることが大切です。
個別支援計画の作成時やモニタリング、保護者の方からの深刻な相談などがここに該当します。この場面では、子どもについてのアセスメント(課題分析)やプランニング(支援計画)の内容を保護者の方と一緒に共有し、理解を深めることが重要です。
支援者の皆さんが意識すべきなのは、どの場面であっても、その後のプロセスにつながる重要な時間であるという点です。短時間での関わりで得た情報や関係性が、長時間での相談援助の質を左右します。
子どもへの支援には以下のように一定の流れがあり、これらを意識することで、保護者の方への説明もよりわかりやすくなります。
情報収集→ アセスメント(課題分析) → プランニング(支援計画)→ インターベンション(介入) → モニタリング(経過観察)相談支援の基本は、「支援の一連の流れを保護者の方と共有すること」にあります。
このプロセスのなかには、「関係づくり」と「ニーズの発見」が含まれています。保護者の方との短時間での関わりの際にこれら2点が行えていると、長時間での関わりの際にスムーズに相談が進めやすくなります。
また、この流れは一度きりではありません。モニタリングの結果、思うような効果が得られない場合や状況が改善しない場合には、アセスメントを見直し、プランニングを変更する必要があります。
児童発達支援管理責任者(児発管)は、こうした一連の流れのなかで個別支援計画を立てていますが、多くの方は、その過程を保護者の方と共有する時間を十分に取れていないかもしれません。
※事業所運営では、相談援助を正しく「加算」につなげることも重要です。 家族支援に関する加算のポイントをまとめた資料を無料で提供していますので、ぜひお手元でご活用ください。
支援の流れのなかで、最も重要になるのが「アセスメント」です。「アセスメント」を簡単に説明すると、「子どもの状態や課題を正確に理解・分析すること」を指します。わかるようで難しいですよね。具体的にアセスメントとは何かを考えていきましょう。
皆さんは、事業所のなかで「おやつを食べるときに立ち歩く子ども」がいた場合、その行動が起きている理由をどう考えますか?
・感覚刺激を常に求めているため、じっとしていられない
・お腹がいっぱいで、おやつを食べたくないからつまらない
・「食べるときは座る」というルールが理解できていない
・おやつよりも気になるものがある
・先生や友達に注目してほしいなど、たくさんの理由が思い浮かぶでしょう。しかし、「立ち歩く」行動だけを見ていては、この「なぜ」への答えはわかりません。
上記のようなケースでは、多くの支援者は「座ってください」と介入します。その理由は、「おやつを食べるときは座る」というルールがあるからです。そして、「ルールを守れていない(理解していない)から、守れるように正しく教えなければいけない」という判断が、そのまま介入(指導)につながっているのです。
しかし、その子が立ち歩く理由は、本当に「ルールを理解していないから」なのでしょうか。先ほど挙げたように、子どもが立ち歩く理由は様々なはずです。では、数ある可能性のなかから、「ルールを理解していない」と判断した根拠は何でしょうか。
根拠は「なぜ」を考えなければ出てきません。この「なぜ」を考えることが「アセスメント」に相当します。支援の流れを思い出すと、「アセスメント」の前には「情報収集」がありました。アセスメントを行う(なぜを考える)とき、支援者の価値判断や主観で「なぜ」の答えを出してはいけません。情報に基づいて「なぜ」の答えを推測することが、正確なアセスメントを行うために必要不可欠です。
「おやつを食べるときに立ち歩く子ども」という情報だけでは、「なぜ」の答えを絞ることはできませんでした。つまり、もっと多くの情報収集をする必要があるということです。
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情報収集と同時に、「なぜ」を正確に理解するためには、子どもの発達段階に関する知識が不可欠です。先ほどの「おやつを食べるときに立ち歩く」という1つの行動でも、複数の発達要素が関係しています。
意欲と好み:子どもがおやつに興味をもっているか
体幹と筋力:椅子に座っていられるだけの体幹の安定性があるか
微細運動:おやつの包装紙を開いたり、手でつかんだりするための運動機能が備わっているか
目と手の協応:食べ物をつかんで口に運ぶための運動協調性があるか
集中力:1つのことに集中できるだけの筋力と精神的安定性があるか
社会規範:「おやつを食べるときは座る」というルールを理解できているか
立ち歩く行動の背景に、まだ十分に促進されていない発達要素(体幹や集中力など)があれば、「座っておやつを食べる」というルールを教える前に、まずはそれぞれの発達要素を促進するための働きかけや、環境面(椅子の高さや硬さ、おやつの種類や大きさなど)の工夫を検討することも必要です。
つまり、子どもの行動を多角的・段階的に分析してはじめて、実態に即した適切なアセスメントが可能になるのです。
もし、「なぜ」を理解せずに介入するとどうなるでしょうか。
たとえば、体幹が十分に育っていない子どもに対して、繰り返し「座りなさい」と指示を出すケースです。子どもにとっては「物理的にできないこと」を繰り返し言われることで、心的苦痛を感じるようになります。その結果、支援者との関係が悪化し、子どもはさらに反発を強め、支援者がさらに言葉を増やす…という悪循環に陥ります。
つまり、「なぜ」を理解しない不適切な介入は、支援者と子どもの信頼関係を壊し、その後の支援全体の効果を低下させてしまいます。これを避けるために必要なのが、丁寧なアセスメントです。
保護者の方が子育てに悩み、困難さを感じていることの多くは、行動の背景にある「なぜ」が見えにくいことに起因しています。そこで重要になる支援者の役割は、保護者の方がもつ「お子さんに関する豊富な情報」と、支援者がもつ「専門的な知識」をかけ合わせ、この「なぜ」を一緒に探り、共有することになります。
丁寧なアセスメントをするための重要なコツは、①子ども側の要因、②環境の要因、③支援者側の要因の3つをそれぞれ考え、その相互関係を理解することです。
障害特性、発達段階、興味・関心、性格・特徴など
⇒ その子自身に関する特性を理解することです。
部屋の雰囲気、使用している道具、一緒にいる友達、光や音などの五感への影響など
⇒ 子どもを取り巻く物理的・社会的環境を分析することです。
支援者の知識やスキル、性格、支援者自身がサポートされる環境にいるかどうか
⇒ 意外かもしれませんが、これが大きく影響します。余裕がない支援者と、充実している支援者では、同じ場面でも見え方や対応が異なってきます。
これら3つの要因それぞれを丁寧に分析し、その相互関係と相性を考えることで、はじめて正確なアセスメントができるようになるのです。
最後に、非常に大切ですが見落とされやすいポイントをご説明します。それは、丁寧なアセスメントができるかどうかは、個々の支援者の努力だけでは決まらないということです。丁寧なアセスメントを行うためには、支援者が「学べる環境」と「サポートされる環境」の両方を備えていることが必要です。
■「学べる環境」とは、研修機会が充実していること、先輩からの学習機会があること、子どもの発達に関する知識を深める機会があることなどです
■「サポートされる環境」とは、心理的安全性が保たれていること、疲弊した状態で支援をしない体制があること、困ったときに相談できる体制があることなどです管理者や経営者の皆さんは、個々の支援者のスキルアップだけでなく、支援者を支える環境づくりをすることが大切な役割となります。支援者が十分にサポートされ、継続的に学べる環境があってこそ、はじめて保護者の方への適切な相談援助が実現できるのです。
皆さんの児発・放デイの現場が、子どもと保護者の方にとって、本当に必要な支援ができる場所になることを願っています。
※浜内先生執筆による相談援助の「実践テクニック」についてはこちら
(執筆:発達ナビ編集部)
以上、相談援助におけるアセスメントのポイントを浜内先生に解説していただきました。専門的な視点から「質の高いアセスメント」を説明いただきましたが、これらを日々の業務で実践し続けるのは、決して簡単なことではないでしょう。
こうしたアセスメントの難しさを解決するツールとして、LITALICO発達ナビには研修教材サービスがあり、以下をご用意しています。
①「アセスメント」に役立つツール
②「相談援助」に役立つ保護者支援の解説動画
アセスメントに役立つツールとして、「基本情報の整理シート」と「スキルの整理シート」があります。
このシートは専門家の監修を受けているため、個別支援計画につながる情報を抜け漏れなく収集できる
ダウンロードして印刷することも、エクセルでデータ保存することも可能

この整理シートはアセスメントのなかで役立ち、手順を踏むことで、誰でもお子さまの「できる・できない」を評価することが可能
スキルの整理から支援の優先順位付けまでを1枚のシートで完結できるため、「基本情報の整理シート」と使用することで、アセスメントの流れを網羅できる

お子さまの「特性ゆえの言動」への具体的な手立てだけでなく、進学や家族間の関係性に至るお悩みまで幅広くカバー
保護者のお悩み別に分類しているため、実際に受けた相談内容をもとに、参考にしたい動画を探すことができる
◎お悩みへの解説動画のテーマ

研修教材サービスには、上記のほか「支援に関する研修動画」や「運営知識・法定研修の解説動画」などもございます。
以上のツールや動画にご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。




浜内彩乃(はまうち・あやの):
「大阪・京都こころの発達研究所 葉」代表、京都光華大学看護福祉リハビリテーション学部准教授。臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士などを保有。著書は『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』(ソシム)など多数。
※専門家執筆による「環境調整」や「ペアトレ」のコツをまとめた記事もございます。ぜひご覧ください。
ペアトレ×個別編:児発・放デイのための「ペアトレ」入門【個別編】
ペアトレ×グループ編:児発・放デイのための「ペアトレ」入門【グループ編】
ワーキングメモリ:【児発・放デイ】ワーキングメモリとは?
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