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更新日:2026/3/10

【具体例あり】児発・放デイの「環境調整」のコツとは? ―ちょっとした工夫で支援の質を高める

「環境調整、具体的にどうすればいいか」と迷っていませんか。 この記事では、児童発達支援・放課後等デイサービスで使える「環境調整」のポイントや工夫、具体例などについて、特別支援教育コーディネーターのいるかどり先生にわかりやすく解説していただきました。

  • この記事のポイント

    • 環境調整の特徴:言動の原因を本人だけでなく環境との相互関係で捉え、周囲を整えて子どもが安心できる状態をつくる。

    • 3つの柱:スタッフの関わり方の人的環境、教材等の物的環境、場のつくりの空間的環境で構成。

    • 支援の視点子ども主体で実態を把握。「自己選択・自己決定・成功体験」を意識した仕組みを構築。

    目次

    1.なぜ今、「環境調整」が大切なのか?

    質の高い支援に欠かせない環境調整

    環境調整とは、子どもの周囲の環境を整えることです。その根底には、暴言などの言動の原因を「本人のみ」に求めず、周りの環境を中心に捉えたうえで、あくまで原因は「環境と本人の双方向の関係性の中にある」という考え方があります。

    児童発達支援と放課後等デイサービスの両ガイドライン(令和6年7月)には、約10年で事業所数・利用者数が増えた一方で、運営や支援の質の確保が課題とされてきたことが明記されています。
    利用が広がった今だからこそ、 何となくや勘に頼らず、どのスタッフが担当しても一定の質を担保できる「環境づくり」が重要です。各環境の特徴は次項でご説明します。

    大切なのは、「苦手なことをがんばらせる」ことよりも、まず「子どもが関わる環境を整える」ことで、子ども自身が安心して力を発揮できる状態をつくることです。

    「生活スキルの獲得が難しい」などの様子が見られたときに、本人の努力不足やわがままと捉えるのではなく、環境調整によって改善・克服・解決の糸口を探すことが、質の高い支援の出発点になります。

    環境調整は、子どもの権利擁護でもある

    忘れてはならないのは、子どもを「権利行使の主体(自分の権利を自分で使う中心)」として尊重する視点です。子ども自身が、自らのウェルビーイング(心身・社会的に満たされた状態)を主体的に実現していけるよう支援することが求められます。

    子どもたちが生活・学習する環境が整えば、「できる」ことが増えます。子どもの意向や強みを活かすことは、意欲の向上や自己肯定感の向上の土台になります。

    環境調整は、発達支援における重要な基盤であると同時に、権利擁護(権利を守る取組み)の実践でもあると言えるのです。

    ※参照

    2.支援の質が変わる! 環境調整の3つの柱とは?

    児発と放デイの両ガイドラインでは、「スタッフ等の人的環境」や「施設や遊具等の物的環境」、さらには「自然・社会の事象等の環境」を考慮し、支援にあたる必要があるとしています。

    この記事では、私自身のこれまでの実践と研究から、日々の中で使いやすいよう「いるかどり式」として、「人的環境」「物的環境」「空間的環境の3本柱で整理していきます。

    ①人的環境(スタッフの表情や声かけの重要性)

    人的環境は、スタッフだけでなく、子ども同士も含めた「人間関係や関わり方」です。スタッフの表情、声の大きさ、話す速さ、距離感、待つ姿勢は、それ自体が環境になります。たとえば、以下のような人たちが人的環境になります。

    保護者、担当スタッフ、友だち、クラスメイト、学校の教職員、地域の人 など

    ②物的環境(教材や運動用具、机や個人用ロッカーなどの重要性)

    物的環境は、教材・遊具・運動用具、机や椅子、個人用ロッカー、視覚支援(見てわかる手がかり)など「活動を支えるモノ全般」です。モノは「便利」であるだけでなく、子どもの安心感と参加のしやすさをつくるツールになります。たとえば、以下のようなものが物的環境です。

    机、椅子、鉛筆、マット、トランポリン、洋服、シール、おはじき、写真、イラスト など

    ③空間的環境(安心できる空間、集中できるスペース、構造化の重要性)

    空間的環境は、部屋のレイアウト、動線、刺激量(音・光・人の多さ)など「場のつくり」です。「時間や空間を本人にわかりやすく構造化(見通しがもてるように整理)」することが大切です。安心できる空間が整うと、子どもは「次に何が起きるか」を予測でき、おだやかに見通しをもって活動に参加しやすくなります。たとえば、以下のようなものが空間的環境です。

    雰囲気、風土、コミュニティ、設備、物の配置、設計、時間、制度、音、光 など

    3.環境調整は「子ども主体」で考える

    環境調整で重要なのは下記の点です。

    • 計画的に環境を整えること

    • 子ども自身が環境に関わり、自発的に活動できる環境をつくること

    • 子どもによる選択を促すこと

    • できることや得意なこと、そして本人の可能性を最大限に引き出すこと

    子どもに関わる大人が「最大の人的環境である」ことをスタッフ全体で自覚することが大切です。また、子どもの実態把握をする際には、大人主体ではなく、子ども主体で考えることから環境調整はスタートします。

    子ども主体で実態を把握する

    たとえば、目の前で子どもが「泣く、叫ぶ、暴言を吐く、暴れる」といった言動をとっているとします。このとき、視点をどこに置くかで、その後の支援の方向性は大きく変わります。

    ●大人主体で見ると…
    表面的な行動だけで判断してしまい、周囲を困らせる「困った子」であると捉えてしまう
    
    ●子ども主体で見ると…
    その行動を本人なりの「SOSやサイン」として捉え、「困っている子」であるという理解につながる

    4.環境調整の実践例を押さえよう

    ここまでの考え方を踏まえ、現場ですぐに活用できる「具体的な環境調整の例」をご紹介します。

    環境調整の例

    ①人的環境の例
    • 指示が通りにくい → 短く具体的な構文で伝える+視覚支援(イラストカードの提示など)

    • 活動に入りにくい → 参加方法や順番を選べる工夫+見通しをもてるようにする

    • 切り替えが苦手 → 予告支援(例:あと1回で終わり)+終了合図を統一する

    • 不安感が強い → 気持ちを受け止める+前回の成功体験を言語化する

    ②物的環境の例
    • 片づけが苦手 → 教材の置き場所を写真でラベリング、量を減らす

    • 待てない → タイマーや残り時間を表示し、「待ち時間が見える」状態をつくる

    • 書けない → 椅子の調整や補助具(握りやすさを助ける教材)を準備する

    • やる気が続かない → スモールステップで少量課題に分け、ごほうびシールなどを置く(自分で進度確認ができるようにする)

    • 聴覚が過敏 → 本人が選べる調整アイテム(例:イヤーマフ)を用意し、本人の使用タイミングを尊重する

    ③空間的環境の例
    • 動き回る → 活動エリアを床テープ等で区切り、トランポリンの場所や絵本・パズルの場所などを視覚的に示す

    • 集中が続かない → 集中できる個別スペースを設置し、短時間利用の休憩スペースへ移動できる動線をつくる

    • 身支度を忘れる → ルーティン(例:カバンの片づけ→手洗い→着替える)を固定し、掲示する

    • 集団がきつい → 小集団でできる机配置、個別に取り組めるコーナーを設置する


    ●支援の質を高める支援教材と研修動画はこちら
    スタッフ研修のバナー

    5.環境調整を行ううえで意識したいこと

    よかれと思って「みんな同じ空間ややり方」に揃えると、感覚や経験など様々な理由から苦しくなってしまう子どもがいます。環境を「均一化」するのではなく、「子どもにとってわかりやすい環境」になるように整えることが大切です。
    「本人の強み」を活かしながら、「自己選択」「自己決定」「成功体験」の3つを意識して以下のことを考えてみましょう。

    ■絵カードなどの教材を見える場所に置く

    たとえば、活動・席・道具などを絵カードで提示し、自分で選べる教材を使用します。このとき、担当スタッフだけが使用するのではなく、本人が意思表示のツールとして、自分で使用することができるように環境を整えます。参加方法の選択肢を自己決定(自分で決める経験)できる仕組みをつくるのです。

    ■得意なことが輝く役割を用意する

    たとえば、運動が苦手でドッジボールに参加することが難しいといった場合には、点数係やタイムキーパーなど、強みが発揮される「居場所」を用意することで成功体験を積み重ねていきます。

    ■環境づくりに参加してもらう

    子どもと相談をしながら、ラベル貼り(「ラベルはひらがな、漢字、イラスト、どれがいい?」と質問)、予定ボードの並べ替え(「マグネット、カード、タブレット、どれが使いやすい?」と質問)など、子ども自身が環境に関わる機会をつくることで主体的に関わる経験を積んでいきます。

    ■振り返りを「見える化」する

    たとえば、振り返りカードを用意して、「終わった活動にシールを貼る」「活動場面を写真で残す」など、達成したことが見える形になることで、自己効力感の向上を目指します。活動中に失敗をしてしまったり、参加が難しかったとしても、子どもたちのできている部分を見つけ、次につながる振り返りをしましょう。

    ■時間や空間を本人にわかりやすく提示する

    自由時間など、「自由に過ごしてもよい時間」に見通しをもつことが難しく、不安になってしまう子がいます。たとえば、自由時間の前に「休憩→遊びを選択→開始」の流れを固定し、遊びを選ぶ場所(予定ボード前)と意思表示の方法(イラストを指差し)を決めるだけで、迷いによる混乱が減ります。
    選ぶことが難しいときには、スタッフが選択肢を2択に絞るなど、「本人が選べる仕組み」に調整することも環境調整において重要です。

    6.質の高い支援を「継続」させるためのポイント

    環境調整は、担当者のセンスだけに任せると続きません。支援の開始前や終了後に、短時間でいいので「スタッフ間で打合せを行うこと」「児発管や管理者が、室内のレイアウトや装飾等に心を配り、必要に応じて改善すること」など、組織として質を保つための視点が大切です。
    主導は児発管や管理者(事業所運営の責任者)が担い、現場のスタッフが日々の実践と振り返りを回す「仕組み」が必要になります。

    近年は、便利なサービスが提供されていますので、限られた業務時間の中で、これらをうまく活用しながらスタッフの負担を軽減することで、子どもと関わる時間や環境を整える時間を生み出すことが重要です。

    ●環境調整のBefore→Afterの例

    Before

    After

    あの子はいつも泣いている

    スタッフがおだやかな表情、静かな声、伝わる語彙で支援すれば、笑顔で過ごせる

    あの子は文字を書くことができない

    書字補助具とひらがな50音表があれば、書くことができる

    あの子は身支度ができない

    イラストや写真で視覚支援をすれば、自分で身支度ができる

    あの子は気持ちの切り替えができない

    パーテーションで区切られた空間があれば、15分程度で気持ちを切り替えることができる

    できないことばかりに目を向けてしまうことは、子どもを否定し続けることと同じです。専門性を高めることで、子ども一人ひとりが成功体験を積み重ねることができるように支援をしましょう。

    組織全体で「支援の質を高める」ために役立つ資料を無料でプレゼント中です。ぜひご活用ください。

    7.環境調整に役立つLITALICOのサービス

    (執筆:発達ナビ編集部)

    以上、環境調整の基本とコツをいるかどり先生に解説していただきました。
    環境調整には「人・物・空間」の3つの環境がありますが、LITALICO発達ナビでは、人的・物的環境をサポートし、質を高めるための「研修教材サービス」を提供しています。ご興味がある方は、ぜひ導入をご検討ください。

    研修教材サービス

    研修教材サービスには、スタッフのための「支援教材」や、支援・運営知識などに関する「研修動画」をご用意しています。

    ■専門家監修の教材が1万点以上

    • 運動遊びやソーシャルスキルなど、カテゴリーごとに教材を用意。子どもの発達段階に合わせて選べ、各教材ではねらいや手順等を説明

    • 印刷するだけで使える「プリント教材」も豊富なため、スタッフの準備時間を大幅に軽減できる

    ■支援・運営知識の研修動画

    • 支援」の動画は1本約2〜10分。「困った行動への関わり方」など、実際の場面を基に支援の基本や具体的な手立てを学べる

    • 運営」の動画は、請求業務や加算のポイントなどの基礎知識を解説

    • 虐待防止研修やBCPなどの「法定研修」の動画は、それぞれ研修動画・研修計画書などの各種様式、参加者用のアンケートがセット

    研修教材サービスには、上記のほか「保護者会で活用できる動画」などもあります。ご興味のある方は、ぜひ以下よりご相談ください。

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    執筆者紹介

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    いるかどり
    特別支援教育コーディネーター、小学校教諭、幼稚園教諭、学校心理士。空に架かる橋Iコミュニティ代表。Instagramでは、特別支援教育に関する実践・研究の情報を発信。著書は『子どもの発達障害と環境調整のコツがわかる本』(ソシム、2023年)など多数。


    専門家執筆による「相談援助」や「ペアトレ」などのコツをまとめた記事もございます。ぜひご覧ください。

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