更新日:2026/5/29

【保育所等訪問支援】訪問先との連携・関係構築のコツとは? —児発・放デイの確認事項と効果的な伝え方

保育所等訪問支援では、先生方との関係構築に苦手意識をもつ方も多いのではないでしょうか。この記事では、スムーズな訪問のための事前準備や、授業観察・直接支援・間接支援のポイントなどについて、現役の特別支援教育コーディネーターである、いるかどり先生に解説していただきました。

  • この記事のポイント

    • 関係構築の基本:訪問先との関係づくりは、支援の「大前提」。相手の考え方などを尊重しながら、寄り添うスタンスで連携する。

    • 授業観察の要点:授業は「子ども・担任・環境」の3セットで観察。子どもの行動の前後の出来事も見ることが大切。

    • 効果的な間接支援:相手が続けやすい、実情に合った内容を提案する。フィードバックでは、うまくいっていたことを必ず伝える。

    ##目次

    1.保育所等訪問支援で大切な姿勢

    保育所等訪問支援は、子どもと生活・学習をつなぐ大切な「連携」です。子ども本人への支援はもちろん、訪問先の先生(保育士・教職員など)への支援、保護者やきょうだいなど家族への支援を通じて、子どもの育ちの環境を整えていくことが重要です。

    訪問先の先生方との関係づくりは、支援の「大前提」となります。いつでも「子どもが主語」「相手に寄り添う」「相手を尊重する」、これら3つの姿勢を忘れずに保育所等訪問支援を進めていきましょう。

    私は小学校で「特別支援教育コーディネーター」を務めているため、この記事では学校の例を出しながら、事前準備授業観察直接支援間接支援などのポイントを解説していきます。

    ※保育所等訪問支援の人員基準や基本報酬についてはこちら

    2.保育所等訪問支援では、先生との信頼関係が重要

    小学校の特別支援教育コーディネーターとして連携を進める中で、何より大切だと感じるのは、「相手の立場に立って考えること」です。

    学校の教職員は、日々、多くの子どもたちを見ながら、限られた時間の中で指導や支援にあたっています。「目の前の一人の子どもを大切にしたい」という想いがあっても、集団全体の流れや授業の進行など、同時に考えねばならないことは多々あります。

    だからこそ、まずは「その忙しさや責任の重さを理解しようとする意識」をもつことが、関係づくりの土台になります。

    相手に「寄り添うスタンス」で連携する

    信頼関係を築くうえで、一番大切なのは「相手への尊重」です。

    保育所等訪問支援は、訪問先の先生方に何かを一方的に“教える”ものではありません。訪問先が大切にしている教育や指導の考え方、これまでの実践を尊重しながら、「この子のために一緒に考える」という寄り添う気持ちで連携することが大切です。

    実態把握では、その子が過ごしている環境にも目を向ける

    保育所等訪問支援では、子どもを中心に据えながら、先生方と一緒に「環境や関わり方を見直すことがよりよい支援につながる」と考えられます。

    子どもの実態把握で特に大切なのは、子ども本人だけを見るのではなく、「その子が過ごしている環境」にも目を向けることです。

    たとえば、「落ち着きがない」と見える姿も、よく見ていくと、以下のように捉え直すことができます。

    ■ 教室の音や人の動きが気になっているのかもしれない
    ■ 課題の量や座席の位置が合っていないのかもしれない
    ■ ことばだけの説明よりも、見通しがあるほうが理解しやすいのかもしれない

    子どもの姿を特性だけで説明するのではなく、環境との関わりの中で見ていく視点があると、「困った行動」と見えていたものが「助けてのサイン」に見えてきます。

    いるかどり先生執筆による環境調整」のコツや具体例についてはこちら

    3.スムーズな訪問のための事前準備と当日のポイント

    訪問前の丁寧な準備は、スムーズな連携の第一歩です。連絡・確認・相談・報告を意識し、以下のチェックリストを活用して準備を進めましょう。

    【本人・保護者への確認事項の例】
    □ 保育所等訪問支援を必要としているのか、本人と保護者に意向を再確認する
    □ 保護者に同意を得た範囲内で、情報共有する内容を整理しておく
    【訪問先への確認事項の例】
    □ 事前に園や学校などに電話し、訪問の目的・滞在時間・参加者を確認する(日程調整が必要な場合、先方が即答できないことも多いため、早めの連絡を心がける)
    □ 園や学校などの駐車場所、入室方法、受付場所、名札や身分証の提示方法を確認する
    □ 訪問先のHPを確認し、教育・保育の理念や大切にしていることを把握する
    □ 個別の指導計画など、必要な配慮事項の有無を確認する
    【当日の持ち物・マナーの例】
    □ 足元は脱げやすいスリッパではなく、動きやすい室内履きを準備する(外履きが必要な場合もある)
    □ 清潔感を大切にし、オフィスカジュアルを意識した動きやすい服装にする
    □ メモをとる場合には、管理職や担任に承諾を得る
    □ 当日のスケジュールは事前に付箋などに書き、担任に渡せるようにする
    □ 訪問終了時、担任や管理職への挨拶と感謝の言葉を忘れない

    訪問先の敷地に入った瞬間から観察は始まります。校舎や校長室の雰囲気、人的環境・物的環境・空間的環境、休み時間の子どもの様子などを把握しましょう。 

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    4.授業観察のポイント①

    直接支援や間接支援につなげるための授業観察は、単に「見る」だけではありません。「子ども・担任・環境」の3セットで観察しましょう。

    【子どもの観察ポイントの例】
    □ 活動・学習課題への参加の様子
    □ 言語指示や視覚指示の理解
    □ 集中力の持続時間
    □ 困ったときの表現方法
    □ 大人や友達との関わり方
    【担任の観察ポイントの例】
    □ 表情や声かけ
    □ 声かけのタイミング
    □ 指示の出し方
    □ 子どもの困り感の捉え方や教育観
    □ 全体指導や個別指導の方法
    【教室・学級の観察ポイントの例】
    □ 座席位置や活動位置
    □ 視覚的な情報量
    □ 聴覚的な情報量
    □ お道具箱やロッカーの使いやすさ
    □ 学級の雰囲気や教室の人数

    5.授業観察のポイント②

    授業観察をする際には、その瞬間だけを切り取って見るのではなく、前後の出来事もセットで見ることが大切です。

    (例)授業中に指名されないと、大声を出して机をたたくAさん

    (きっかけ)
    言動の直前に起きたこと ⇒

    (行動)
    観察できる言動 ⇒

    (結果)
    言動の直後に起きたこと

    挙手をしたが、担任が他児を指名し、Aさんは指名されなかった

    大声を出す
    机をたたく

    担任が近づき、「静かにしなさい」と注意し、個別に声をかけた

    今回の例では、「担任の注目を得たい」という可能性が高そうに見えますが、たまたま観察できた場面だけでは、判断することはできません。たとえば、「指名されなかったくやしさや見通しの崩れ」「待つことの難しさ」「2学期なのに、まだ1回も指名されていないこと」などがあるのかもしれません。

    観察で大切なのは、決めつけて見るのではなく、「どんな場面で起きやすく、結果として何が起きているのか」を丁寧に見たり、聞いたりすることです。

    6.直接支援「子ども本人へのアプローチ」のポイント

    初回訪問からすぐに「本人に関わる」のではなく、必ず授業観察からスタートしましょう。そのうえで、授業中の「直接支援」であれば、授業の流れを大切にしながら、訪問先の活動の妨げにならないよう配慮して支援を行うことが大切です。

    個別に関わる場面があったとしても、それはその場だけではなく、子どもが集団の中で安心して過ごし、活動・参加がしやすくなることにつなげていく視点を意識します。

    また、「子どもを集団に合わせること」だけを目的にしない点に注意しましょう。大切なのは、子どもに無理をさせて合わせるのではなく、その子の特性や理解の仕方に応じて、環境や活動の流れ、関わり方を工夫することです。子どもが「自分でできる」「安心できる」カタチを探していくことこそ、子ども主体の直接支援となります。

    7.間接支援「管理職や教職員へのアプローチ」のポイント

    保育所等訪問支援において、間接支援はとても大切な役割をもちます。
    訪問支援員が学校にいる時間は限られますが、訪問先の先生方は、そこで毎日子どもたちと過ごしています。だからこそ、子どもへの支援をその場限りで終わらせず、日々の関わりの中で続けやすい形にしていくことが、間接支援の大きな目的になります。

    前述の通り、間接支援で意識したいのは、「伝える」よりも「一緒に考える」という寄り添うスタンス(姿勢)です。訪問支援員が専門職として的確な助言を行うためにも、先生方が実践している工夫や努力を受け止めつつ、「学校にあるものを活用して、この子がもう少し参加しやすくするにはどうしたらよいか」を一緒に考えていきましょう。

    ●間接支援の4つのポイント

    ① 抽象的な言葉ではなく、相手に伝わる具体的な言葉で話す
    ② 担任・本人・保護者が納得しながらとり入れられる形を一緒に考える
    ③ 子どもの課題だけでなく、強みやうまくいっている場面を共有する
    ④ 提案をするときは、学校・相手の実情に合った内容にする(補助具や支援ツールの提案も同様)

    間接支援は、訪問支援員が前に立つのではなく、先生方の実践を後ろから支えるものです。先生方の悩みや工夫に耳を傾け、続けやすい方法を一緒に探していく関わりが、訪問先との信頼関係を深めていきます。

    8.フィードバックやケース会議のポイントとは?

    保育所等訪問支援では、訪問の場での支援だけでなく、その後にどのように共有し、次につなげていくかが大切です。フィードバックやケース会議は、単なる報告の場ではなく、子どもへの支援をよりよいものにしていくための機会といえるでしょう。

    伝わるコミュニケーションを意識する

    まず意識したいのは、先生方に伝わりやすい形でフィードバックする「伝わるコミュニケーション」です。せっかくよい視点や気づきがあったとしても、専門用語や情報が多すぎると、相手に十分伝わらないことがあります。学校の先生方は、日々、忙しい中で子どもたちと向き合っているため、伝える内容をできるだけ整理し、短時間で、理解しやすい形にしましょう。

    フィードバックで伝えるべき内容

    フィードバックでは、うまくいっていたことを必ず伝えましょう。子どもの困難さばかりを伝えると、受け取る側も「できていないことを指摘された」と感じやすくなります。

    たとえば、「この声かけのときは動きやすそうでした」「この活動では安心して参加できていました」など、できていたことや支援の効果が見られた場面を共有することで、先生方は支援の方向性を前向きに捉えやすくなります。現場での実践を認めながら伝えることが、信頼関係づくりにもつながります。

    いつでも主語は「子ども」です。いつでも子どもを真ん中に、サポートの輪を広げていきましょう。

    9.保育所等訪問支援をうまく進めるには?

    (執筆:発達ナビ編集部)

    以上、保育所等訪問支援での関係構築のポイントをいるかどり先生に解説していただきました。記事の通り、支援の大前提には「先生方との信頼関係」があります。加えて、よりスムーズな連携のためには、全体の進め方を把握することが欠かせません。

    そこでLITALICO発達ナビでは、保育所等訪問支援の全体像や訪問支援の流れなどがわかる「研修教材サービス」をご用意しています。

    研修教材サービス

    • 4つのパート(サービス概要編、訪問先との関係構築編、支援計画作成編、支援提供編)に分けた動画で解説

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    執筆者紹介

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    いるかどり
    特別支援教育コーディネーター、小学校教諭、幼稚園教諭、学校心理士。空に架かる橋Iコミュニティ代表。Instagramでは、特別支援教育に関する実践・研究の情報を発信。著書は『子どもの発達障害と環境調整のコツがわかる本』(ソシム、2023年)など多数。


    専門家執筆による「相談援助」や「ペアトレ」などのコツをまとめた記事もございます。ぜひご覧ください。

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