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更新日:2026/4/28

【児発・放デイ】アセスメントで使える「相談援助」の実践テクニック ―保護者支援の対応力を高める

著者:浜内彩乃

/臨床心理士・公認心理師

「しっかり話を聞いたのに改善につながらない…」そんな悩みを解決するカギは、保護者を正しく理解する「アセスメント力」にあります。この記事では、信頼関係を築くための9つのポイントや、アセスメントすべき内容について、臨床心理士・公認心理師の浜内彩乃先生に解説していただきました。

  • この記事のポイント

    • 相談援助の本質:最も大切なのは、「傾聴」ではなく「アセスメント」

    • 信頼関係の構築:保護者の信頼を得るには、話を最後まで聞く、できるだけ具体的に確認する実行可能な支援方法を提案するなどの意識が大切。

    • 保護者のアセスメント:保護者自身の理解度心身の余裕子育ての環境などを多角的に把握する。

    目次

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    1.相談援助では、アセスメントが最も重要

    児童発達支援や放課後等デイサービスでは、日々、保護者の方との面談や相談対応に追われているかと思います。そうしたなか、次のような悩みをもつ方も多いのではないでしょうか。

    ■ 話を聞いたあとに、「相談してよかった」となかなか言ってもらえない
    ■ 多くの時間を割いたのに、改善につながっていない
    ■ 同じような相談が続き、どう対応したらいいのか迷ってしまう

    実は、保護者の方との相談援助で最も大切なのは、「傾聴」ではなく「アセスメント」です。そして、保護者の方との信頼関係を築き、求めているニーズに応えるためには、保護者そのものをアセスメントする力が必要なのです。

    2.「話を聞く」だけでは、保護者は満足しない

    多くの支援者は、保護者の方から相談を受けたとき、「まずは話を聞こう」と傾聴を心がけます。そして、相談者の気持ちに共感し、一生懸命に耳を傾けます。
    確かに「傾聴」は相談援助の基本で、保護者の話をさえぎらず、否定せず、最後まで聞く姿勢は大切です。しかし、ここに落とし穴があります。

    知りたいのは、原因の理解と具体的な対応方法

    傾聴は必要ですが、具体的なアセスメント(課題分析)プランニング(支援計画)の話がなければ、保護者の方は「相談してよかった」とはならず、問題も解決しません。つまり、保護者の方が求めているのは、「共感」だけではなく、

    • なぜ、「こうした行動を子どもがとるのか」という原因の理解

    • 「どうしたらいいのか」という具体的な対応方法

    なのです。ただし、例外があります。保護者の方が本当に「グチを聞いてほしい」というニーズのときは、傾聴のみでOKです。その場面を見極める力も、支援者に必要な技量となります。

    まずは、保護者の方との信頼関係を築くためのポイントをご説明します。

    3.保護者の信頼を得る9つのポイント

    保護者の方からの信頼を得るには、次の9つのポイントを意識することが大切です。それぞれを見ていきましょう。

    1. 保護者の話をさえぎらない、否定しない
    2. 支援者が障害に関する専門的知識をもつ
    3. 保護者の困り事をそのまま受け止める
    4. 保護者から教わる姿勢をもつ
    5. 子どものよいところを共有する
    6. 保護者が行っている取り組みを確認する
    7. できるだけ具体的に話を聞く
    8. 対応方法の根拠を伝える
    9. 実行可能な支援方法を提案する

    1. 保護者の話をさえぎらない、否定しない

    当たり前のようですが、実践は難しいものです。特に、支援者が「その対応は違う、正確ではない」と感じたときに中断しがちですが、まずは「最後まで聞く」ことが大切です。意図をすべて受け止めてから、アセスメントに基づいた説明をします。

    ただし、内容が理解できなくなった場合には、整理のために話を止めことは必要です。その丁寧な確認こそが、「正しく理解しようとする姿勢」として保護者の方に伝わります。

    2. 支援者が障害に関する専門的知識をもつ

    保護者の方は「わが子への理解」を重視するため、専門的知識に基づいたアセスメントは、信頼を築くための確かな土台になります。

    ですので、自身の経験だけに頼らず、専門書などを通じて正しい知識をとり入れるようにしましょう。アセスメントの際、「今、お子さんはこういう発達段階なので…」「この障害の場合は…」などと正確に伝えることができれば、保護者の方は安心します。

    3. 保護者の困り事をそのまま受け止める

    保護者の方が「これは問題だ」と感じていることを、支援者が「これくらいなら大丈夫」と捉えてしまうと、その時点で信頼感は失われます。

    仮に、困り事が客観的には小さな問題であったとしても、その保護者の方にとっては大きな課題かもしれません。その点を理解し、丁寧に対応することが大切です。

    4. 保護者から教わる姿勢をもつ

    支援者は支援のプロですが、お子さんのことを一番よく知っているのは保護者の方です。「保護者から教わる」という姿勢をもつことで、保護者の方は「自分の話を大切にしてくれている」と感じます。

    アセスメントをするうえで、ご自宅での様子などは極めて価値のある情報ですので、丁寧に耳を傾けることが重要です。

    5. 子どものよいところを共有する

    保護者の方は、つい「子どもの困った行動」に注目しますが、子どものよい点などを具体的に伝えることでその不安感は和らぎます。困った行動に加え、子どもの強みや可能性を見るなど、ポジティブな側面をとり入れることもアセスメントでは大切です。

    ただし、これが「保護者の困り事を軽く見ている」ように誤解されることもあります。そこで、保護者の方の悩みに寄り添いつつ、子どものよい側面が問題行動の改善につながることを丁寧に説明していきましょう。

    6. 保護者が行っている取り組みを確認する

    保護者の方は、すでに様々な工夫や取り組みをしていることがあります。
    もし、それらの取り組みがうまくいっていない場合には、まず、実行している内容や場面、環境を具体的に確認しましょう。そして、生じている問題を整理し、これまでの努力をしっかりと認めたうえで、新たな方法を提案することが重要です。

    7. できるだけ具体的に話を聞く

    「お子さんは最近どうですか?」という曖昧な質問ではなく、「朝、起きるのに何分かかりますか?」「声をかけたあとの反応はどうですか?」というように、具体的に聞くことで、正確なアセスメントができるようになります。

    保護者の方から「子どもの調子が悪いんです」と相談された際も、「どのように調子が悪いのでしょうか?」と具体的に質問をすることが大切です。

    8. 対応方法の根拠を伝える

    対応方法を提案する際には、「こうしてみてください」と伝えるだけではなく、「なぜそうするのか」という根拠も説明することが重要です。根拠があれば保護者の方も納得して実行しやすくなり、また、「他の場面でもこうしてみよう」と考えるきっかけにもなります。

    9. 実行可能な支援方法を提案する

    いくら効果的な方法でも、保護者の方の状況に合っていなければ、実行は難しくなります。そこで、生活状況や時間的余裕、性格・特徴などを考慮したうえで、「この家庭なら実行できる」方法を提案することが大切です。

    たとえば、「大声で怒らない」ことが有効だとしても感情のコントロールが難しい場合には、「長引かせない」「10回に1回こらえられればOK」など、保護者の方が「それならやれそう」と思える方法を提案しましょう。「どのようなことなら実行できそうですか」と聞いてみるのもよいでしょう。


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    ■「関係者の悪口」にどう対応するか?

    保護者相談では、「前の事業所では…」「学校の先生は…」といった、他の関係者や関係機関への不満が出てくることがあります。保護者の方の不満は丁寧に聞く必要がありますが、重要なのは「同調しないこと」です。

    適切な対応は、保護者の方の気持ちを受け止めながら「それは大変な思いをされましたね」と理解を示しつつ、「ただ、その先生も、こういう意図で対応していたのかもしれませんね」というように、複数の視点を提示することです。この点に注意しましょう。

    以上、保護者の方からの信頼を得るためのポイントを見てきました。次項からは、保護者のアセスメントについてご説明します。

    4.保護者の「何」をアセスメントするのか?

    多くの支援者は、子どものアセスメントについては研修や日常業務のなかで学びますが、保護者のアセスメントについては触れられる機会が少ないのではないでしょうか。効果的な保護者支援を行うためには、保護者についても詳しくアセスメントする必要があるため、ここではその内容をお伝えします。

    1. 保護者の理解度をアセスメントする
    2. 子育ての環境をアセスメントする
    3. 保護者のキャパ(心身の余裕)をアセスメントする
    4. 保護者と子どもの相性をアセスメントする
    5. 保護者の得意なことと苦手なことをアセスメントする
    6. 保護者の価値観をアセスメントする

    1. 保護者の理解度をアセスメントする

    保護者の方へのアセスメントでは、「障害や支援についてどのような理解度をもっているか」を把握する必要があります。

    ここで効果的なのは、「どうしてこういう行動をするんでしょうね?」「普段はどんなふうに対応されていますか?」という開かれた質問です。こうした対話から保護者の方の現在の理解度が見えてきますので、それに合わせて説明のレベルを丁寧に調整することが大切です。

    2. 子育ての環境をアセスメントする

    「どなたが子育てに関わっているのか」「周囲に頼れる資源がどのくらいあるのか」を把握することも重要です。「頼れる方はいますか?」「使っている制度はありますか?」という質問から、保護者の方が孤立していないか、社会的サポートが充実しているかが見えてきます。

    孤立している場合には、活用できる社会資源を新たに提案する必要があるかもしれませんし、環境によって子どもへのアドバイスも異なってきます。

    3. 保護者のキャパ(心身の余裕)をアセスメントする

    保護者の方が体力的に疲弊していたり、心理的に追い詰められていたりすると、どんなに効果的な対応方法を提案してもそれを実行するのは難しくなります。

    たとえば、「眠れていますか?」という質問は、睡眠状況の確認だけではなく、心身の健康状態を把握するためのものです。質問の際には、表情や雰囲気、笑顔があるかどうかなどを観察することも必要です。保護者の方の心身状態が悪い場合には、医療機関などの適切な機関につなぐことも支援者の重要な役割です。

    4. 保護者と子どもの相性をアセスメントする

    たとえば、「几帳面な子ども」と「片付けが苦手な保護者」の組み合わせでは、表面的には「衝突が起きる」可能性があります。

    「決まった場所にモノがないとイライラするお子さん」と「急いで適当にモノを置く保護者」の間でケンカが起きたとしても、それはどちらかが悪いわけではありません。大切なのは善悪で判断せず、「お互いの価値観や好みが違うことで問題が生じている」と捉えることです。そうすることで、どちらも悪者にせず、「どうすればいいのか」を考えることができるようになります。

    5. 保護者の得意なことと苦手なことをアセスメントする

    当然ながら、保護者の方には得手・不得手があります。「〇〇がお得意なんですね」という声かけから得意分野を見つけ、それを活かした支援方法を提案することが大切です。一方、苦手なことを無理に実行してもらうのではなく、その部分をどう補っていくかを一緒に考える視点も重要です。

    6. 保護者の価値観をアセスメントする

    保護者の方が「子育てで何を重視しているのか」を理解することは、支援方法を決めるうえで非常に重要です。

    たとえば、「お子さんの宿題と睡眠では、どちらを優先したいですか?」「これだけは譲れないものはありますか?」といった質問は、その方の価値観を知るための手がかりになります。重要なのは、支援者の基準で「決めつけない」ことです。「早寝のほうが大切」などと勝手に判断せず、保護者の方の価値観を理解し、尊重することが大切です。

    5.同じ相談でも、保護者によって対応が変わる

    同じような相談でも、保護者の方によってアドバイスの内容は変わります。たとえば、「子どもがスマートフォンばかり見ている」という相談を3人の方から受けたとします。下記のように、それぞれの状況によって対応方法は異なります。

    ●保護者Aさんの場合

    障害理解がある程度あり、サポート環境も充実していて、心身の状態も良好
    ⇒ この場合は、スマートフォンの影響について丁寧に説明し、具体的な対応方法を一緒に考えることができます。

    ●保護者Bさんの場合

    障害理解がまだ浅く、孤立しており、疲弊している
    ⇒ この場合は、Bさんの心身の状態をサポートすることが先決です。そのうえで、対応方法を提案する必要があります。

    ●保護者Cさんの場合

    障害理解は深いが、祖母と子育てに関する方針が異なり、家庭内で対立している
    ⇒ この場合は、家庭内の関係性を理解したうえで、家族全員が納得できる方法を提案する必要があります。

    つまり支援者には、保護者の「アセスメント」を行い、その方に本当に必要な支援とは何かを見極める力が求められるのです。

    保護者の心身の状態が悪い場合の対応

    最後に、支援者として知っておくべき重要なポイントをお伝えします。
    保護者の方の心身の状態が悪い場合(たとえば、保護者が抑うつ状態にあったり、極度のストレスを抱えていたり、睡眠不足が続いていたりする場合)には、児発・放デイの支援者の業務範囲を超えることがあります。その場合には、医療機関など適切な機関につなぐことが、最も必要な支援かもしれません。

    子育てに深く悩んでいたり、虐待が疑われるような言動がある場合にも、保護者自身の悩みに十分に対応してくれる相談機関(児童相談所やこども家庭センターなど)を紹介することが必要な支援となります。

    支援者の役割の1つは、「保護者が必要とする専門家や機関に適切につなぐこと」ですので、それを判断できる力も大切なのです。子どもをアセスメントする力に加えて、保護者をアセスメントする力を磨いていきましょう。

    6.相談援助やアセスメントの質を高めるには?

    (執筆:発達ナビ編集部)

    以上、アセスメントで使える「相談援助」の実践テクニックについて浜内先生に解説していただきました。

    LITALICO発達ナビの研修教材サービスでは、「アセスメント」に役立つツールや、保護者支援に活用できる130本以上の動画1万点以上の支援教材などをご用意しています。

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    専門家執筆による「環境調整」や「ペアトレ」のコツをまとめた記事もございます。ぜひご覧ください。

  • 著者:浜内彩乃

    臨床心理士・公認心理師

    「大阪・京都こころの発達研究所 葉」代表、京都光華大学看護福祉リハビリテーション学部准教授。臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士などを保有。著書は『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』(ソシム)など多数。

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