050-3196-1304
(平日10:00〜17:00)
更新日:2026/3/16
著者:深澤大地
/臨床心理士・公認心理師

児童発達支援・放課後等デイサービスにおけるグループ・ペアトレは、保護者同士の交流から生まれる「関わり合い」が大きな力となります。今回は、グループ形式ならではのメリットや運営のルール、ホームワーク継続のコツなどを、臨床心理士・公認心理師の深澤大地先生に解説していただきました。
【この記事のポイント】
グループ実施の利点:保護者同士のエピソードが子育てのモデルになるなど、「仲間の存在」が継続の力になり、モチベーションにつながる。
運営の必須ルール:徹底した秘密保持と、お互いがほめ合える雰囲気づくりを心がけることで、安心して本音を話せる場を整える。
効果的な進め方:一方的に教えるのではなく、他の保護者の考えを聞き、それを自身の子育てに活かしていけるような「グループの雰囲気づくり」が何より大切。
前回は、個別支援におけるペアトレの考え方とポイントを紹介しましたが、今回は、複数の保護者の方を対象に行う「グループ・ペアレントトレーニング」(以下、グループ・ペアトレ)についてご説明します。
※前回の「個別支援編」はこちらを参照ください
グループ・ペアトレというと、「支援者が保護者の方に子どもへの具体的な関わり方を教えるもの」というイメージをもたれることがあります。しかし、実際には支援者が教える以上に「保護者同士の関わり」が大きな力になります。
児童発達支援・放課後等デイサービスの現場では、「家族支援を充実させたい」という声が多く聞かれる一方で、限られたリソースのなか、個別相談だけでは制約があることもあるでしょう。グループ・ペアトレは、このような課題に対する1つの選択肢にもなります。
※なお、「家族支援に欠かせない加算」のポイントをまとめた資料を無料でプレゼントしています。ぜひお手元でご活用ください。
グループ・ペアトレの目的は大きく3つあります。
①保護者の方の子育てスキルの獲得
②子育てスキル向上による保護者の方のストレス軽減
③参加している保護者の方同士の関係性の構築特に3つ目の「関係性の構築」は、グループ形式だからこそ生まれる大きな特徴です。
※ペアトレの概要や種類、相談先などについてはこちら
グループ・ペアトレには、集団(グループ)で実践するからこそ得られる独自のメリットがあります。主な3つの効果を見ていきましょう。
グループ・ペアトレに参加する前の保護者の方は、「このような悩みをもつのは自分だけではないか」「他の保護者の方はうまくやっているのではないか」と大きな不安を抱き、緊張した様子でスタートします。
しかし、参加者同士で子育ての悩みごとを話し合っていると、「うちも同じです!」「わかります!」という声が自然に生まれます。このようなグループのなかにいると、不安や緊張が徐々に和らぎ、安心してグループ・ペアトレに参加できるようになります。
支援者が「ほめることが大切です」と伝えても、保護者の方はなかなか実感が湧かないことがあります。しかし、他の保護者の方から、「目を見てほめたらとても嬉しそうだった」「少し近づいて声をかけたら反応が変わった」といった具体的なエピソードを聞くと、「それなら自分もできそう!」という意欲につながります。同じ立場の人が語る実践は、「子育ての具体的なモデル」となります。
グループ・ペアトレは数か月から半年間ほど続くことがあり、毎回「ホームワーク(宿題)」があります。この長期間、忙しい日々のなかでホームワークを続けることは容易ではありません。しかし、参加者同士の関係が深まってくると、「みんなもがんばっているから、私もやってみよう!」という気持ちが自然に生まれます。
こうした「仲間の存在」が継続の力になるのは、個別形式では得にくい、グループならではのメリットです。
グループの運営に慣れるまでは、個別に声をかけて参加者を募るほうが安心でしょう。保護者の方の参加条件として、以下の2点を確認しておくと、その後の運営がよりスムーズになります。
グループ・ペアトレは、参加者同士のグループワークやロールプレイを中心に進めます。そのため、人前で話すことに強い緊張を感じる方などの場合は、グループ形式がかえって大きな負担になることもあります。参加希望の方に対しては、あらかじめこうしたグループ・ペアトレの特徴をお伝えしておくとよいでしょう。
ペアトレのホームワークでは、毎日の「観察」や「記録」を継続し、ホームワーク用紙に記入する必要があります。忙しい家事や育児の合間に無理なく取り組めそうか、事前に確認しておきましょう。
グループ・ペアトレでは、様々な年齢の保護者の方が、数か月から半年程度の期間を一緒に学びます。参加者と支援者がお互いに意見を出し合い、協力しながら「今よりも楽しい子育て」ができるよう、あらかじめルールを決め、共有しておくことが大切です。その際、特に押さえておきたいポイントは以下の2つです。
グループ・ペアトレで話した家庭のことが、他の場所でうわさ話として広まってしまう不安があると、安心して本音を話すことはできません。「グループ・ペアトレで聞いた内容は外には持ち出さない」というルールを全員でしっかりと共有しましょう。
グループ・ペアトレに参加されるのは、日々の子育てに悩んでいる保護者の方々です。だからこそ、グループ内では「何ができていないか」ではなく、「がんばって取り組んでいることやうまくいったこと」に目を向けることが大切です。グループのなかで、自然とお互いがほめ合える雰囲気づくりを心がけましょう。
※LITALICOでは、支援の質を高める1万点以上の支援教材や、家族支援に活用できる130本以上の解説動画をご用意しています。詳細については、下記より資料をご請求ください。
「LITALICO発達ナビの研修教材サービス」の資料をもらう【無料】
各回の基本的な流れは以下の通りです。
「ホームワークの振り返り(※初回を除く)」→「講義・ワーク」→「シェアリング(共有)」→「ロールプレイ(練習)」→「質疑応答」→「次回のホームワーク説明」主な学習テーマ(プログラム内容)は以下が基本になります。
行動とは何かを理解する
自分の子どもの行動を「好ましい行動」「好ましくない行動」「危険な行動」の3つに分類する
好ましい行動に対して肯定的な注目(ほめ方)を与える
効果的なほめ方の練習をする
好ましくない行動への対応や、危険な行動への対応について学び、練習をする
園や学校との連携のポイントについて知る
具体的なプログラムの構成や内容については、記事末の「参考文献」が参考になります。児発・放デイでグループ・ペアトレを始めてみようと考えている方は、プログラム作成の参考にしてください。
グループ・ペアトレでは、上記のような内容を扱いますが、これらを一方的に「教えること」が目的ではありません。グループ・ペアトレの成果は、プログラムの中身以上に、その「場」の空気感に左右されるからです。
支援者が一方的に話し続けてしまうと、保護者の方は受身になり、主体的に考えたり、話し合ったり、実践することが難しくなります。他の保護者の方の考えを聞き、それを自身の子育てに活かしていけるような「グループの雰囲気づくり」が何より大切になります。
グループ・ペアトレを重ねるうちに、保護者の方の言葉には明らかな変化が表われてきます。最初は「ほめるところが見つかりません」と話していた方が、回を追うごとに「子どもを観察していると、困った行動よりも好ましい行動がたくさんあることに気がつきました」「いつもはほめない場面で意図的にほめたら、とても嬉しそうな表情をしました」と、前向きな言葉を口にされるようになるのです。
こうした保護者の方の実感は、多くの実証的な研究によっても根拠があり、下記のように感情面だけでなく、具体的な行動の改善も報告されています。
・子どもの「好ましい行動」の増加と「好ましくない行動」の減少
・「叱責頻度」の減少と「ほめる頻度」の増加
・保護者のストレスの軽減 など個別編で詳しくお話しましたが、叱る頻度が増えると「子育ての悪循環」に陥ります。しかし、ほめる頻度が増えれば「子育ての好循環」につながります。それによって、保護者の方も自信をもって子育てをすることができるようになるのです。
グループ・ペアトレを求める保護者の方が多い一方で、運営できる支援者(ファシリテーター)が不足しており、地域で参加できる機会は限られているのが現状です。だからこそ、日頃から子どもや保護者の方と深く関わっている児発・放デイのみなさんには、家庭の状況に寄り添った具体的な支援が可能になります。
保護者の方にとって、そこが「子どもだけでなく、家族も支えてくれる場所」であることは、通所先を選ぶ際の大きな安心感と信頼につながるでしょう。
グループ・ペアトレは、子どもを変えるための場や手段ではありません。保護者の方が孤立せず、「これなら自分にもできそう」と思える環境を整えていくための実践です。
児発・放デイだからこそできる家族支援の形があります。みなさんもまずは小さなグループから始めてみませんか。
※家族支援を評価する「家族支援加算」のポイントをまとめた資料を無料でプレゼント中です。質の高い支援を継続するために、ぜひお役立てください。
※参考文献
阿部美穂子・深澤大地 (2011): 教育相談機関におけるグループペアレント・トレーニングの効果と参加者アンケートによるプログラムの妥当性の検討. 富山大学人間発達科学部紀要第5巻第2号 pp. 29-39.
深澤大地 (2017): 地域の公的機関が協働して実践するペアレント・トレーニングの効果 -地域の体制づくりとプログラムの実践. 東京福祉大学・大学院紀要第8巻第1号 pp. 15-24.
岩坂英巳 編著(2021): 困っている子をほめて育てる ペアレント・トレーニングガイドブック 第2版 活用のポイントと実践例. じほう
上林靖子 監修, 北道子・河内美恵・藤井和子 編集(2009): こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル. 中央法規出版
小暮陽介・阿部美穂子・水内豊和(2007): グループペアレント・トレーニングプログラムの効果についての検討―教育センターにおける実践から―. 富山大学人間発達科学部紀要 第2巻第1号 pp.137-144.
(執筆:発達ナビ編集部)
以上、グループ・ペアトレのポイントを深澤先生に解説していただきました。前回の「個別支援編」の記事もぜひご覧ください。
LITALICO発達ナビでは、日々の相談(家族支援)に活用できる130本以上の解説動画や、1万点以上の支援教材をご用意しています。
スタッフの研修や、保護者会などで使える資料の作成負担を減らしたい方は、ぜひ下記よりお気軽に資料をご請求ください。

※専門家執筆による「相談援助」や「環境調整」などのコツをまとめた記事もございます。ぜひご覧ください。
相談援助とアセスメント:相談援助とアセスメントの基本とコツとは?
ワーキングメモリ:【児発・放デイ】ワーキングメモリとは?
保訪×連携のコツ:【保育所等訪問支援】訪問先との連携・関係構築のコツ
著者:深澤大地
臨床心理士・公認心理師
長野県出身。臨床心理士・公認心理師・認定専門公認心理師。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務したのち、富山県総合教育センター客員研究主事として着任。2017年に「富山県こどもこころの相談室」を個人開業し、子どもや保護者、その家族へのカウンセリングを実践。
開催中のWEBセミナー
児発・放デイの施設運営に関するお役立ち情報などをお伝えします。
無料
詳細・日程を見る
LITALICO発達ナビ for Business
関連サービス
© LITALICO Inc.