更新日:2026/6/10
障害福祉のM&Aは、利用者さんやスタッフの未来を守るための大切な戦略です。業界の現状、手法や価格の決まり方など「後悔しない事業継承」のためのポイントを解説します。
M&A(合併と買収)とは、複数の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったり(買収)することです。売り手側は事業承継問題を解決して売却益を得られ、買い手側は新規参入や拠点拡大をスピーディーに行うことができます。
障害福祉サービスは、地域の方々にとってなくてはならない存在です。「売買」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、後継者不在といった課題をM&Aで解決することは、利用者様へのサービスを途切れさせず、スタッフの雇用を守るための「前向きな経営戦略」と言えます。
今、障害福祉業界でM&Aが急増している背景には、業界の変化に伴う「売り手・買い手双方のニーズ」があります。
多くの経営者が、以下のような「自社だけでは解決が難しい課題」に直面しています。
人材不足と採用難:特に児童発達支援管理責任者やサービス管理責任者などの有資格者の確保が難しく、配置基準を維持できないと、最悪の場合「運営停止」となるリスクも常に隣り合わせとなります。
将来への不安と経営体力の限界:報酬改定のたびに複雑な事務作業や設備投資が求められ、小規模運営では対応が追いつかないケースが増えています。
後継者不在と出口戦略:親族やスタッフへの承継が難しく、「自分が退いた後の利用者やスタッフの行き場」を確保するために、信頼できる大手・中堅法人への第三者承継(M&A)を選択する動きが一般的になっています。
売却・譲渡に関するご相談はこちらからお問い合わせください。
一方で、買い手側もまた、M&Aを「事業を成長させるためのエンジン」と捉えています。
「時間」と「人材」の獲得:新規開設には数か月の準備と採用活動が必要ですが、M&Aであれば「既に配置されている専門スタッフ」と「稼働している拠点」を即座に確保でき、事業展開のスピードを格段に上げられます。
報酬改定への対応力を高める規模の拡大:拠点を増やすことで、管理部門の共通化によるコスト削減(規模の利益)を実現し、改定による収益圧迫に耐えうる強固な経営基盤を構築しようとしています。
買収・譲受に関するご相談はこちらからお問い合わせください。
現在は、積極的に拠点を広げたい大手・中堅法人が、各事業所が大切に育てた「拠点」や「スタッフ」を求めています。経営が行き詰まり、スタッフが離れてからでは事業の価値は下がってしまいます。将来的な売却も視野にあるなら、経営が安定している「今」こそ、自社の価値を客観的に知り、良い条件で信頼できるパートナーを見つけやすいタイミングと言えます。
福祉事業所の譲渡には、主に「法人譲渡」と「事業譲渡」があります。自治体によっては事業譲渡による許認可の引き継ぎを認めていない場合もあるため、事前の確認が重要です。
法人譲渡(株式譲渡):会社のオーナー(株主)が株式を譲渡します。許認可、雇用契約、利用契約がそのまま引き継がれるため、手続きがスムーズに進むのが特徴です。
事業譲渡:法人が運営する事業の一部、または全部を譲渡します。この場合、買い手側での許認可の新規取得が必要になり、従業員や利用者様とも新たに契約を結び直す必要があります。
売却価格は一般的に「純資産+営業利益(数年分)」がベースとなります。
ただし障害福祉業界には独自の評価ポイントがあります。たとえば、好立地であること、専門的な支援ができる状態(有資格者が勤務している)であること、高い稼働率などは、たとえ現状が赤字であっても高く評価されるケースが多々あります。
また、仲介会社を利用する場合は「着手金」「中間報酬」「成功報酬」などが発生するのが一般的です。成功報酬は、取引金額に応じて算出される「レーマン方式」という計算方法が主流です。
売却・譲渡に関するご相談や査定のご希望はこちらからお問い合わせください。
一般的なM&Aのステップは以下の通りです。早期の情報収集と、優先順位(価格・スピード・相性)の明確化が成功の鍵となります。
まずはM&A仲介会社との初回面談・相談を実施します。自分の望んだタイミングで望んだ相手がいるとは限らないので、売り手・買い手ともに早期の情報収集が必要です。また、価格やスピードなど優先順位をつけておくことも大切です。
M&A仲介会社との面談が終了し、依頼したい会社であることが確認出来たら正式にNDAとアドバイザリー契約を進めます。障害福祉事業へ理解がある仲介会社か、また、手数料体制はどうなっているかしっかりと確認しておくようにしましょう。
売り手は匿名概要書を作成します。その際、「事業所を特定できない内容であるか」「伸び代や特長を明記する」ことが重要です。
経営者同士が面談し、理念や思いを確かめ合います。売り手は従業員に知られないよう細心の注意が必要です。また、マイナスな情報があれば隠さず早めに伝えたほうが良いでしょう。買い手はなるべく多くの案件を検討したほうが納得のいく事業継承となるでしょう。売り手の課題(採用や売上など)を解決できるかも検討するようにしましょう。
面談等を経て大まかに合意ができたら買い手側による財務・法務・運営状況の詳細調査を行います。売り手は正しい情報・数字を提供するようにし、必要に応じて顧問税理士・弁護士にも相談しましょう。買い手の場合は税理士・弁護士に限らずM&Aのデューデリジェンスに慣れた専門家を活用することを検討しましょう。
売り手も買い手も経営者自らが最終判断を行い、契約を締結します。税理士・弁護士・親族・部下等に判断を委ねてはいけません。
売り手は関係者(従業員・大家・銀行など)の情報を買い手に正確に伝え引継ぐことが大切です。買い手は従業員・利用者の脱落などの事態も想定しつつ入念な準備をして売り手や従業員・利用者を不安にさせないようにすることが何よりも大切です。
実行後は「ボスは一人」を徹底し、前オーナーは必要以上に顔を出さないことが現場の混乱を防ぐコツです。買い手は2~3か月で現場を掌握できるとよいでしょう。また、売り手の課題を早期に解決できるように動きましょう。
障害福祉事業の売却・購入を後悔なく進めるために大切なポイントは以下の点に気を付けると良いでしょう。
売り手が気を付けるべきポイント
タイミングを見極める:売り手は市場動向を把握し、可能であれば黒字の状態、あるいは「赤字が膨らむ前」に動くことが価格の最大化に繋がります。
買い手が気を付けるべきポイント
行政のローカルルール:定員厳守など、自治体独自の運用を必ず事前に確認しましょう。
資格と研修の精査:特に児発管の「5年ごとの更新研修」の有無などは運営継続に直結する大きなポイントです
債務とリースの確認:借入金だけでなく、車両ローンや過去の「過誤請求」がないかも精査が必要です。
売り手・買い手共に気を付けるべきポイント
障害福祉業界に理解のあるM&A仲介会社か確認する:障害福祉サービスのM&Aは、一般的なビジネスとは異なる特有のルールが多いため、業界に精通した仲介会社の選定が不可欠です。専門知識を持つパートナーを選ぶべき理由は以下の通りです。
人員配置基準や報酬改定のリスク・将来性を正しく見極める必要があるから
買収後に「指定(許認可)が下りない」といった行政手続きのトラブルを防ぐため
施設利用者や専門スタッフの環境を守り、理念のミスマッチを防ぐため・障害福祉特有の強み(有資格者や地域連携)を反映した適切な売買価格を算出するため
障害福祉業界の特有の売却理由やM&Aの流れ・ポイントをまとめてお伝えしました。M&Aは決して「終わり」ではなく、利用者様やスタッフの未来を守り、経営者自身が新しい人生のステージへ進むための「前向きな決断」です。
「まずは価値を知りたい」「どんな候補企業があるか知りたい」といった些細なことでも、お気軽にご相談ください。皆さまが歩んできた大切な道のりを、一緒に未来へつなぐお手伝いをさせていただきます。
監修:ブティックス株式会社
障害福祉M&A支援センター
障害福祉・介護業界M&A実績No.1の「M&A支援センター」を運営。
業界に精通した経験・知識が豊富なアドバイザーがM&A成立までサポートする。
050-3196-1304
(平日10:00〜17:00)
株式会社LITALICO
東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー15F/16F
LITALICO発達ナビ 施設サービス運営事務局
E-mail:com_facility@h-navi.jp
© LITALICO Inc.