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更新日:
監修者:辻田 健悟
| 行政書士 社会保険労務士 アンテリジャンス行政書士法人

「児童発達支援施設を開設したいが、何から手をつければいいか分からない」「必要な資金や、オーナー自身の資格要件を知りたい」とお考えの方へ。
早期療育への関心が高まる中、児童発達支援の需要は年々拡大しています。しかし、事業をスタートさせるには行政が定める厳格なルールをクリアしなければなりません。
この記事では、児童発達支援の立ち上げに必須となる要件や、リアルな立ち上げ資金の内訳、開所までの具体的なステップを解説します。独自のコンセプトづくりなど、安定経営に向けたコツも紹介しますので、開業準備のガイドとしてお役立てください。
また、LITALICOでは、これから児発・放デイの立ち上げを考えている方をサポートしております。無料セミナーや資料ダウンロード、個別相談をご用意しておりますので、ご興味のある方はぜひご活用ください。

児童発達支援の開設を検討するにあたり、まずは事業の役割や、現在の市場を取り巻く環境を正しく理解しましょう。ここでは、対象となるお子さまや、今後の需要について解説します。
児童発達支援(児発)は、発達が気になるお子さまに対し、日常生活の基本動作や集団適応のためのトレーニングを提供する児童福祉法に基づくサービスです。対象となるのは、主に 未就学児(0歳〜小学校入学前)のお子さまです。
児童発達支援の主な役割は以下の通りです。
日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与
集団生活への適応訓練(ソーシャルスキルトレーニングなど)
日常的にケアを行う保護者さまの身体的・精神的な負担軽減や相談支援
利用にあたっては、お住まいの自治体から発行される「通所受給者証」が必要となります。医師の診断書や専門家の意見書等があれば、必ずしも障害者手帳を持っていなくても利用できるケースが多いです。
児童発達支援の施設数と利用児童数は、年々増加傾向にあります。発達障害(ASDやADHDなど)に対する社会的な認知度が高まったことで、「就学前から早く適切な療育を受けさせたい」と考える保護者さまが増えており、今後の需要も引き続き高いと考えられています。

一方で、参入事業者が急増したことを受け、一部の自治体では「総量規制(施設の新規開設を制限すること)」が導入されているエリアもあります。現在の市場は「ただ場所を作れば利用者が集まる」という段階を終え、「質の高い支援や独自のプログラムを提供する施設が選ばれる」段階へと移行しています。
これから開業して安定した経営を目指すのであれば、明確なコンセプトを持ち、差別化された施設づくりが求められます。
放課後等デイサービスを開業するには、行政(都道府県や指定都市・中核市など)から「指定事業者」として認可を受ける必要があります。この認可を得るために満たさなければならないのが、「法人格」と「3つの指定基準(人員・設備・運営)」を合わせた計4つの条件です。
児童発達支援事業は、個人事業主の形態ではスタートできません。新規に法人を設立するか、既存法人の定款を変更して申請を行う形になります。
営利法人: 株式会社、合同会社(LLC)など
非営利法人: NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人など
法人の種類は問いませんが、設立にかかる時間やコスト(株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜)をベースに決定しましょう。なお、すでに法人をお持ちの場合は、定款の事業目的欄に「障害児通所支援事業」等の記載を忘れずに追記してください。
●法人形態について詳しくはこちら
放課後等デイサービス・児童発達支援事業を開業できる法人形態とその選び方
オーナーや代表者自身に福祉の資格や経験がなくても開業可能です。ただし、施設を運営するにあたって、定められた専門スタッフを配置する義務があります。
職種 | 主な要件・役割 |
|---|---|
管理者 | 施設の統括やスタッフ管理を行う責任者。原則として常勤1名の配置が必要ですが、特別な資格は求められません(児童発達支援管理責任者との兼任も可)。 |
児童発達支援管理責任者(児発管) | 個別支援計画の立案などを担う中核スタッフ。一定水準の実務経験(医療・福祉分野など)および所定の研修修了が必須です(常勤1名以上)。 |
児童指導員・保育士など | お子さまに直接療育を行うスタッフ。定員10名の場合、常勤換算で2名以上の配置が求められます。そのうち1名以上は常勤であること、さらに半数以上が保育士または児童指導員の資格保持者であることなどの細かな条件があります。 |
なかでも「児発管」は人材確保が非常に難しい職種です。採用が遅れるとオープン時期にも影響するため、物件探しと同時に早急に採用活動をスタートさせることをおすすめします。
子どもたちが安心・安全に過ごせる環境を整えるため、施設として使う物件にも厳格なルールが存在します。
指導訓練室:子ども1人あたり2.47㎡以上の広さ(自治体によって変動あり)
相談室:個別面談ができるよう、プライバシーが守られる区切られた空間
事務室:個人情報や重要書類を厳重に保管(施錠管理)できるスペースや備品
洗面・手洗い設備:衛生管理のための手洗い場
静養室:体調不良時などに休めるスペース(相談室等との兼用が認められるケースもあります)
また、内装や広さだけでなく、建築基準法や消防法をクリアしている物件かどうかも重要です。「児童福祉施設」への用途変更手続きが必要になる場合や、新たな消防設備の設置を求められる場合もあるため、賃貸契約を結ぶ前に、図面を持参して行政窓口で事前相談を行いましょう。
適切な療育サービスを提供し続けるための、社内体制やルール作りも審査対象となります。
運営規程の策定:営業日や時間、定員、料金体系などの基本ルールを定めます。
個別支援計画の作成と運用:児発管が中心となり、児童一人ひとりの特性に合わせた計画を作り、定期的なモニタリング(見直し)を実施します。
安全対策・非常時対応:避難訓練の計画、事故対応マニュアルの整備、損害賠償責任保険への加入などが必要です。
契約・重要事項説明:ご家族に対してサービス内容を丁寧に説明し、同意を得た上で契約を結ぶ体制を徹底します。
これらを満たしているか確認するため、行政へ膨大な申請書類を提出することになります。自治体ごとに独自のルール(ローカルルール)が設定されていることも多いため、管轄窓口の最新情報を常にチェックしながら進めることが成功の鍵です。
児童発達支援事業の開業には、行政との綿密な事前協議、厳しい条件を満たす物件の確保、そして最難関とも言える児発管の採用など、多岐にわたる専門知識と労力が求められます。
「予定通りのスケジュールで開所できるか心配」「手続きが多すぎて自分だけでは対応しきれない」といったお悩みがある場合は、専門の開業支援サービスを頼るのも有効な選択肢です。LITALICOで毎月開催の「児発・放デイ開業セミナー」では、児童発達支援の開業にあたってのさまざまな情報を発信しています。

●人員・運営・設備基準について詳しくはこちら
放課後等デイサービス・児童発達支援事業の人員基準、運営基準、設備基準とは?
開業準備は、開所予定日の約半年前から始めるのが一般的です。とくに行政への指定申請は、開設の2〜3か月前(自治体によって異なる)に締め切られるため、逆算して計画的に動く必要があります。ここでは、開業までの具体的な手順を8つのステップに分けて解説します。
STEP1:法人設立と事業計画書の作成
どのような特色を持った施設にするのか事業計画を練り、法人の設立手続きを行います。自治体への事前相談(総量規制の確認など)もこの段階で行います。
STEP2:開業資金の調達
事業計画書をもとに、日本政策金融公庫や民間金融機関へ融資の申し込みを行います。
STEP3:物件探し・契約・リフォーム
基準を満たす物件を探します。契約前に必ず図面を行政や消防署に持ち込み、許可の目処が立ってから契約・リフォームへ進みます。
●物件選びについて詳しくはこちら
放課後等デイサービス・児童発達支援事業の開業で大切な立地と物件選び
STEP4:人員の確保(求人・採用)
施設の要となる児童発達支援管理責任者(児発管)を中心に、保育士や児童指導員の採用活動を進めます。
●児発管について詳しくはこちら
放デイ・児発の児童発達支援管理責任者とは?重要ポジションの採用方法も解説
STEP5:備品や送迎車の調達
デスク、椅子、療育用のおもちゃ、送迎車両などの手配を行います。
●内装について詳しくはこちら
放課後等デイサービス・児童発達支援施設の内装や備品の7つのポイント!少しの工夫で安全・安心に
STEP6:行政への指定申請と必要書類の提出
オープン予定日の約2〜3か月前に指定申請を行います。書類審査後に実地検査が行われます。
STEP7:国保連への請求ソフトの導入
給付費の請求に必要な「業務支援ソフト」を選定し、スタッフ向け研修を行います。
STEP8:利用児童の獲得(集客・広報)
地域の相談支援事業所への挨拶回りや見学会の開催など、積極的な広報活動を行います。
●利用者募集について詳しくはこちら
児童発達支援・放課後等デイサービスの立ち上げに必要な準備は?利用者募集がカギ!
児童発達支援事業を新規に開設するためには、1,500万円程度かかります。全額自己資金ではなく、銀行融資等も活用して調達しましょう。
開設の3か月前までには自治体に提出する指定申請に必要な申請書類を用意しなければならないため、開設半年〜3か月前を目安に申請準備を進めていく必要があります。その準備のなかには「物件の契約」「備品の購入」等のコストがかかるものもあります。
新規開設時に必要な資金は、大きく分けて、開設までに必要な「初期費用」と、開設後数か月分の「運転資金」の2種類があります。それぞれの項目や金額について詳しくご紹介します。
開設までに必要な主な初期費用(合計約800万円以上)には例えば以下の項目があります。
①不動産(物件取得費用と内装費用)
合計で100万〜800万円ほどかかります。物件取得費用(敷金・礼金・仲介手数料など)は80万〜300万円ほど。内装費用は物件の状態や規模によりますが、20万〜500万ほどかかります。戸建て物件を選択する場合は内装費用がほとんどかからないケースもあります。
②施設の保険
目安として施設賠償保険が約6万円、火災保険が約2万円かかると見込んでおきましょう。
③職員の求人費用
例えばスタッフ全員(管理者兼児発管1名、保育士2名など)を成果課金型の求人広告媒体で募集する場合、約90万円程度かかる可能性があります。リファラル採用(縁故採用)ができれば費用を抑えられます。
④利用者募集に関する費用
WEBサイト、パンフレット、広告媒体への掲載等で、40万〜60万円ほど費用がかかる可能性があります。
⑤施設運営で必要な備品購入費
ロッカー、机、椅子、PC、複合機、絵本、おもちゃ、教材、衛生管理・安全管理備品など、合わせて約80万円はかかると見込んでおくとよいでしょう。
⑥車両購入費・自動車保険
送迎サービスをする場合、通常2〜3台は必要です。車両費約130万円+保険代約15万円として3台揃えた場合、約440万円以上かかります。初期費用を抑えるためにリース車(月額3万〜6万円目安)を選択する方もいます。
運転資金とは「人件費や経費の支払いから売上が入金するまでの期間の時間的なズレ」を補うための必要資金です。児童発達支援はサービス提供月の2か月後に国保連から収入が得られるビジネスモデルなので、最初の2か月分は収入がありません。そのため、最低でも2か月分の運転資金(約700万円程度)が必要です。
⑦毎月の人件費
管理者兼児発管1名、常勤3名、非常勤2名を配置する場合、1か月にかかる人件費は約120万円。法定福利費等を含めると最低135万円ほどかかります。
⑧毎月の経費
家賃、水道光熱費、請求ソフト代、広告代、税理士報酬、ガソリン代など、月に約50万〜70万円の経費がかかる可能性があります。
●立ち上げ費用について詳しくはこちら
放課後等デイサービス・児童発達支援事業の開業・立ち上げに必要な資金と内訳を解説!
約1,500万円程度の資金をすべて自己資金で用意するのは難しいため、多くの方が融資や公的な支援制度を活用して資金調達を行っています。資金調達がなければ、物件の契約や準備に遅れが生じるため、早い意思決定が必要です。
日本政策金融公庫の「創業融資」
民間銀行に比べて無担保・無保証人で借りやすく、金利も低く設定されているため、最初の資金調達先として最も有力な選択肢になります。
助成金・補助金の活用
人材確保等支援助成金や、非正規スタッフの正社員化を支援するキャリアアップ助成金、請求ソフト導入時のデジタル化・AI導入支援事業費補助金などが活用できる場合があります。ただし、これらは基本的に「後払い」のため、初期費用の直接の支払いには使えない点に注意が必要です。
●助成金・補助金について詳しくはこちら
放課後等デイサービス立ち上げで使える助成金・補助金とは?開業資金の目安も解説
正しく運営すれば安定した収益が見込めるビジネスですが、廃業リスクを下げるための具体的な対策を知っておくことが大切です。
定員10名の施設を稼働率80〜90%で運営できた場合、1施設あたりの年間売上はおよそ2,500万〜3,500万円程度になります。児童発達支援の開業には法人格が必要となるため、経営者の収入は会社から受け取る「役員報酬(=年収)」という形になります。
1施設のみ運営する場合、年収目安は500万円〜800万円程度になるケースが多いです。多店舗展開に成功すれば年収1,000万円以上も可能ですが、オープン直後は赤字が続くことが多いため、初年度から高い年収を期待するのは危険です。
※上記の売上目安は、月22日〜26日程度の開所を前提とし、「児童指導員等加配加算」や「福祉・介護職員等処遇改善加算」などの主要な加算を適切に取得している場合の概算です。地域区分(級地)や営業日数、算定する加算によって実際の売上は変動します。
①人材不足(特に児発管の離職)リスクへの対策
児発管が退職すると給付費が大幅に減額(減算)され、赤字転落のリスクが高まります。相場に合った給与設定や、業務支援ソフト導入による負担軽減、自社での育成バックアップ体制が重要です。
②他施設とのコンセプトの差別化
画一的なプログラムを提供するだけの施設では選ばれません。「運動療育特化」や「学習支援特化」など、自社の得意分野を活かした明確なコンセプトを打ち出すことが利用者募集の鍵です。
③スムーズな資金繰りのコツ(ファクタリングの活用など)
国保連からの入金が約2か月後になるというキャッシュフローの罠に備え、十分な運転資金を確保します。万が一の際には、売掛金を早期現金化するファクタリングの活用も有効な手段となります。
なお、大阪府や和歌山県など、正式には民間ファクタリング会社への債権譲渡を認めていない都道府県もあるため、事前に開業予定の都道府県が対応しているか確認しておくと安心です。
児童発達支援の開業には、法人設立から物件探し、スタッフの採用、行政への指定申請まで、乗り越えるべき多くのステップがあります。経営者自身の資格は不要ですが、厳格な4つの指定基準(法人・人員・設備・運営)をすべて満たさなければなりません。
「スタッフが採用できず間に合わない」「開業直後に資金ショートした」といった失敗を防ぐためにも、最低でも開業の半年以上前から、ゆとりを持ったスケジュールで準備を始めることをおすすめします。
事前の入念なリサーチと準備を行い、地域のニーズに合った独自のコンセプトを打ち出して、お子さまと保護者さまが心から安心して通える素晴らしい施設づくりを成功させてください。開業に関するご不安や疑問があれば、まずはお気軽にお問い合わせください。

監修者:辻田 健悟
行政書士 社会保険労務士 アンテリジャンス行政書士法人
障がい福祉に特化した士業グループ、アンテリジャンスグループの行政書士法人で所長を務める。
寄り添いをテーマに、障がい福祉事業所の運営をサポートしている。
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