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更新日:2026/3/10

良い物件が見つかったのに、いざ指定申請に臨もうとしたら「新規指定の申請を受け付けていません」と言われてしまう開業希望者も少なくありません。書類不備などの前にそもそも指定権者(自治体)が申請を受け付けていない場合、「総量規制」が実施されている可能性があります。この記事では、児発・放デイでの開業を考えている方に向けて、開業前に必ず知っておきたい総量規制の概要と、その対応策について解説します。
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※本記事はすべての関連情報や各指定権者の解釈等を網羅するものではありません。記事の内容には万全を期しておりますが、実務においては必ずご自身でも指定権者および関係⾏政などの最新情報をご確認ください。総量規制とは、各都道府県・市町村が定める「障害福祉計画・障害児福祉計画(*)」(障害福祉計画等)をもとに、地域のサービスの供給量(提供量)が過剰にならないよう、新規開業を制限する制度です。児童発達支援・放課後等デイサービスは、いずれも総量規制の実施が認められています。
総量規制は、その地域のサービス供給量が障害福祉計画等で見込まれた量を超える場合や、計画の達成に支障を生じるおそれがあると認められたとき、障害者総合支援法・児童福祉法に基づき、指定権者によって実施されます。

※ 画像引用元:制度の持続可能性の確保等について② (p.9)| 厚生労働省
総量規制が実施されている期間は、原則として、対象となっているサービスを新たに開業することができません。開業準備が整ったのに総量規制があって申請できない事態を避けるためにも、指定権者への事前の確認が重要になります。
仮に総量規制が実施されていることを知らずに指定申請手続きを進めようとすると、指定権物(自治体)との最初の接点となる「事前協議(事前相談)※後述」の手前でストップがかかります。そうなった場合、一部の例外を除き、新たに開業可能なエリアを選定し、物件探しや手続きをやり直すことになりますので注意しましょう。
指定申請の流れ(開設までの流れ)はこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
【新規開設】放課後等デイサービス・児童発達支援事業開設までの流れとポイントまとめ
*障害福祉計画・障害児福祉計画:
障害者総合支援法・児童福祉法に基づき、障害福祉サービス等の提供体制や自立支援給付等の円滑な実施を目的として、全国の都道府県・市町村が作成するもの
令和4年度(2022年度)の時点で、児童発達支援は約1万2,000箇所、放課後等デイサービスは約2万箇所と、他の障害福祉サービスと比較してもそれぞれ大きく事業所数が増加しています。
しかしその増加に伴い、質の低い支援を行う事業所の増加、報酬優先の新規参入、国・自治体の財政負担の増大といった問題が表面化してきました。総量規制はこれらの状況に対し、事業所数が需要を大幅に超過しないよう抑制しながら、サービスの質を確保・向上させる仕組みとして、児発・放デイでは平成30年(2018年)に導入されました。
これは、国の方針が事業所数(受け皿の数)よりも支援の質を重視する方向に転換したことを意味しており、自治体は「預かり」ではなく「発達支援の質」を求めているとも言えます。
2024年度から各都道府県・市町村で運用されている「第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画」では、地域の実情に応じたサービスの供給が重視されています。
各自治体は児童人口・障害児数の推移、前年までの利用量などの指標をもとに、地域の実情を反映した「見込み利用量」を設定します。
これらのデータを根拠として、自治体は市町村全域だけでなく、サービス供給量が過剰になっている特定地域のみに総量規制を実施するといった柔軟な施策が可能になりました。
「第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画」では、障害のある人・子どもが施設に通う(通所支援)だけでなく、保育所等訪問支援なども活用して、地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進する体制の構築が重視されています。
その結果、自治体は「児発・放デイ(通所)の枠はこれ以上増やさず、その分を訪問支援など地域移行に関わる他のサービスへ振り分ける」という判断のもと、総量規制が実施できるようになりました。
児発・放デイなどの数は、特に都市部と地方で大きな地域格差があり、利用を検討する方の選択肢や、通所の利便性に差が生まれているという現状があります。
そこで現在の障害児福祉計画では、事業所数が過密=足りているエリアでは新規開業による増加を総量規制で抑制し、足りないエリアでは通常通り新規指定を行うという形で、格差の是正を目指しています。
2024年(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定により、障害福祉制度の方針は「通所場所の確保」から、「その事業所が地域でどのような役割を果たせるか」へと移りました。
これは特に、総量規制が実施されている地域での例外的な新規指定で重要になります。
たとえば、一般型の事業所がすでに飽和状態にあるエリアでも、医療的ケア児の受け入れ体制のある事業所、重症心身障害児対応が可能な事業所などが足りていない場合、例外的に開業が認められる場合があります。
ただしこれは全国一律ではなく、指定権者により対応が異なる点に留意が必要です。
この点は「4.事前協議(事前相談)」の項目で解説します。
(参考)
「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(厚生労働省告示第百十六号、四の3)
「八王子市障害者計画・第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画」八王子市、2024年(令和6年)3月、p.10,117,118
「障害者計画・第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画」小金井市、2024年(令和6年)、p.166,167
「地域差の是正・指定の在り方に係る 対応について」厚生労働省、p.5
『障害者福祉ガイド 障害者総合支援法の解説 令和6年度版』社会保険研究所 編、社会保険研究所、2024年
具体的な申請手続きを始める前に、開業を予定しているエリアで総量規制が実施されているかをある程度把握することができます。この情報は具体的な開業予定地の検討に役立つため、早い段階で必ず調べておきましょう。
調べ方は主に次の2つがあります。
総量規制を実施するとき、指定権者は期間や規制対象サービスなどを公式Webサイトで公開することがあります。
たとえば、
「○○市(知りたいエリア)+児童発達支援 or 放課後等デイサービス(サービス種別名)+総量規制」
といったキーワードで検索し、該当するページが出てくれば総量規制が実施されていることがわかり、出てこなければ実施されていないと考えられます。
直接問い合わせる場合、自治体によって問い合わせ方法が指定されている場合があります。障害福祉分野のページで申請等に関する質問・問い合わせといった項目があれば、そこに記載されている所定の方法で総量規制についての確認を行いましょう。回答が得られるまで時間がかかることが多いですが、この方法がもっとも確実と言えます。
自治体に問い合わせる場合、「いつ・どこで・何のサービスを開業したいか」をはっきりと伝えましょう。
障害福祉計画・障害児福祉計画の項目で解説した通り、総量規制は必ずしも市町村全域に実施されているとは限りません。
障害福祉分野のページで申請等に関する質問・問い合わせといった項目があれば、たとえば次のように、自治体所定の方法で問い合わせるのがよいでしょう。
「○○地区(学区など)に空きはありますか?」
「重心・医療的ケア児を受け入れる予定ですが、開業可能なエリアはありますか?」
「公募制の実施はありますか?」
公募制とは、自由に申請を行うことができる通常の指定申請プロセスとは異なり、自治体があらかじめ設定した枠に応募し、審査の結果認められた場合に開業できる仕組みです。
総量規制が実施されている場合も行われていることがあるので、確認してみましょう。
確認は必ず物件の本契約の前に行いましょう。
これは、物件を契約した後になって、実は開業予定エリアに総量規制が実施されていたことがわかったという事態を避けるためです。
次に解説する「事前協議(事前相談)」が完了するまでの間、物件は入居申込を済ませた状態(いわゆる仮契約)にしておくのも1つの方法です。ただし仮契約が可能かは物件などによって異なるため、別途、不動産事業者への説明や相談、交渉が必要な場合があります。
児発・放デイを開業する場合、多くの自治体では申請の前に「事前協議(事前相談)」を行う必要があります。
さらに東京都など一部自治体では、これ以前に「指定協議説明会」等に出席しなければならない場合もあるため、Webサイトなどでその自治体の指定申請プロセスを確認しておきましょう。
事前協議は基本的に予約が必要です。
予約方法や予約時に必要なものは指定権者によって異なるため、必ず開業予定の自治体の指定申請に関するページを参照してください。
事前協議で求められる情報(後述)を過不足なく提示し、事業所として質の高いサービスを行えることをしっかり伝えることは、開業を進めるための非常に重要な一歩になります。
指定権者との事前協議(事前相談)では、これから開業しようとしている事業者が、障害福祉サービスに求められる指定基準(人員・設備・運営)を満たしているかなどの確認・ヒアリングが行われます。
よく誤解される点として、単に「開業したい」と電話等で相談しただけでは事前協議を行ったことにはなりません。予約を入れ、必要書類を揃えたうえで、担当者と協議に臨む必要があります。
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事前協議で指定権者が確認するのは、主に次のような内容です(指定権者によって異なる場合があります)。
・法人の定款の目的欄に障害福祉サービスを行う旨が記載されているか
・物件が設備基準を満たしているか
・人員配置基準を満たした配置ができるか
・物件が建築基準法および消防法に適合しているか
・開所予定地域の浸水想定区域や土砂災害警戒区域への該当有無を確認しているか
・近隣住民等への説明を行ったか
・駐車場等を確保できているか
・昼食等を提供する場合の保健所への手続きやその見通しは立っているか(参考)
『障害福祉サービス事業 開業・運営ハンドブック』向井博 著、日本法令、2025年
必要書類も指定権者によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。
Webサイトから指定の書式をダウンロードして提出するケースもあります。
・事前協議書
・従業員の勤務体制及び勤務形態一覧表
・組織体制図
・管理者、児発管の経歴書
・物件の平面図(図面)(参照)
「事前協議について」大阪市
このうち図面は、物件が仮契約状態でも入手できる可能性があります。不動産事業者に説明・相談を行ってください。
繰り返し触れている通り、物件の本契約後に総量規制の実施がわかり、物件を変えざるを得なくなってしまうのは大きな痛手です。仮に事前協議後に物件を変えた場合は、協議がやり直しになることもあります。
これを避けるため、事前協議前後の物件に関するフローは、次のようにすると安全です。
①エリア選定・物件候補のピックアップ
②指定権者へ総量規制の有無、開業予定の地域で決められている建物の用途等の確認
③物件の入居申込(物件購入の場合は購入申込や手付金の仮払い)=仮契約
※仮契約状態を維持できる期間は不動産事業者の判断や慣習によるところが大きいため、慎重に相談しましょう
④準備・予約を行い、事前協議に臨む
⑤物件本契約→工事等前述したように、総量規制を実施中でも開業できる可能性のある例外的なケースがありますので、改めて整理しましょう。
特例として開業できる可能性がある代表的な例です。
単に受け入れ可能とするだけではなく、支援の質を確保するための人員配置体制の構築などが求められる場合もあります。
公募制は指定権者が地域のニーズに沿った支援基盤を実現するため、総量規制と同時に実施されることもあります。
受付期間の限定や募集条件、説明会等への参加など、通常の指定申請とは異なるプロセスで手続きを進めることになります。
どちらの場合も特別な手続きや書類等が必要とされる場合が多いため、必ず事前に自治体のWebサイト等で確認しておきましょう。
(参照)
「地域差の是正・指定の在り方に係る 対応について」厚生労働省、p.5
事前協議は事務手続きの一部ではありますが、指定権者に対して事業所の理念、支援に対する熱量、それを裏付ける体制などを伝えるチャンスでもあります。
特に近年の障害福祉サービス全体の「地域移行」というテーマを踏まえれば、事業所のサービスを通じて地域の課題を解決するという姿勢を示すことも重要なポイントです。言葉だけでなくそれを裏付ける資料として、事業計画書などを持っていくのもよいでしょう。
総量規制は単に新規開業を否定するものではなく、地域の実態を細かく捉え、本当に必要としている人に支援を届けるためのシステムです。規制の実施は「供給量は十分であり、これ以上増えると質が担保できなくなる」という地域ニーズの裏返しとも言えます。
まずは自治体Webサイトや担当窓口で状況を把握するところがスタートです。それは同時に最新の「地域の温度感」を肌で感じることにもつながるでしょう。

以上、児発・放デイにおける総量規制について見てきました。児発・放デイを開設するにあたっては、指定基準(人員・設備・運営の基準)を満たす必要があります。
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