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更新日:2026/5/20

採用難が続く障害福祉業界では、面接は選ぶ場であり、「選ばれる場」でもあります。この記事では事業者の方に向けて、応募者の辞退を防ぎ、選ばれるための面接のポイントや進め方、事業所の魅力を言語化するコツなどについて具体的に解説します。
障害福祉業界の皆様は、採用活動において次のような課題を感じたことはありませんか?
■ 求人を出しているがなかなか応募が来ない
■ よい人材からの応募が来ても結局辞退されてしまう
■ 採用したいと思える人が少ない
■ 採用できたとしてもすぐに退職されることがある障害福祉業界の採用をめぐる環境は、この数年で大きく変化しています。
事業所数の増加による働き手ニーズ(需要)が増えているが、
就業希望の働き手の数(供給)が圧倒的に不足している
という状況です。実際、2025年の調査(※)では、84.2%の福祉事業所において人材が不足していると答えています。
つまり、求人数が増える一方で働き手が不足する状態が続いており、求職者側は多くの求人から就職先を比較検討できます。1社に絞っている求職者は少なく、多くは複数の事業所を並行して見比べているのが実情です。そのため、「採用したい」と思える応募者と出会えたとしても、他社と比較されたうえで辞退されてしまうことも珍しくありません。
※参照:「2025年職員不足の実態調査の結果」きょうされん
求職者が辞退を選択する理由として、「ここで働きたい」という志望度が下がったことにより、他の就職先を選択することが挙げられるでしょう。
辞退されてしまう原因としては、主に以下の3点が考えられます。
■①対応スピードの遅れ
1~2日の連絡の遅さが「優先度の低さ」だと受け取られる
■②事前の情報と実態の不一致
求人情報と実態に齟齬(そご)がある場合、不信感に直結する
■③面接官への悪印象
法人側には教えてもらえない“本音”の辞退理由があるでは、応募者の志望度を高め、「この事業所で働きたい」と思ってもらうには、面接でどのような工夫が必要なのでしょうか。
まず押さえておきたい大前提は、面接は法人(事業所)と応募者が対等な立場で向き合う場であるということです。応募者から就職先として選んでもらうためには、自社の魅力をきちんとアピールする必要があります。
また、面接官は法人を代表する存在であり、法人の顔になります。応募者にとって、面接官の態度や発言は、そのまま入社後の上司や組織のイメージに直結します。
「この人と一緒に働きたい」「こういう雰囲気の職場ならやっていけそう」と感じてもらえるかどうかは、面接官の関わり方次第で大きく変わります。
面接で事業所の魅力を伝え、応募者の志望度を上げるためには、以下の4つのポイントを意識しましょう。
まずは基本的なマナーとして、清潔感のある身だしなみや笑顔での挨拶、開始や終了時間の厳守、日程調整などのスピード感などが挙げられます。これらを守ることで、「あなたを大切なゲストとして迎えている」という姿勢を示すことができます。
また、「目を合わせる」「適切に相槌を打つ」「話をさえぎらない」「否定的な言葉を使わない」など、対等かつ真摯に相手に向き合うことを意識します。
よい面だけでなく、課題や大変さなどの「現場でのリアル」を率直に共有することで、信頼につながります。ネガティブな情報は先に伝えておくことで入社後のギャップを小さくでき、応募者自身が「自分にマッチしているか」も判断しやすくなります。
応募者に期待している役割や活躍してほしい場面などを具体的に言葉で伝えます。相手に入社してほしい理由が伝わると、「自分は必要とされている」という実感が生まれ、志望度が高まりやすくなります。
他社ではなく、「この法人、事業所だからこそ」の魅力を提示することも重要です。詳しくは次項でご説明します。
※魅力付け=自社ならではの魅力を言語化
他社との差別化を図るうえでカギになるのが、自社ならではの魅力を言語化することです。そのための4つの切り口をご紹介します。
業界経験者や有資格者ほど、「この事業所ではどんな支援が行われているのか」を重視する傾向があります。次のような観点で、支援の特徴を整理してみましょう。
・プログラムの特徴
学習支援に強い、運動プログラムが豊富、SSTに特化している など
・支援のスタンスや方針
お子さまの「好き」を伸ばすことを重視している、応用行動分析に基づいている など
一般的に、退職理由として最も多いのは「人間関係」と言われています。だからこそ、職場環境やチームの雰囲気を可視化できると、応募者に大きな安心感を与えられます。
・スタッフの層
20代が中心に活躍している、子育て中のパパ・ママ職員が多い など
・チームの連携
児発管・施設長とのコミュニケーション頻度、事業所全体の会議の様子、児発管・保育士・作業療法士など異なる役割のスタッフ間の意見交換の仕組み など
・新人スタッフへのサポート
OJT研修制度、定期面談、ウェルカムランチの実施 など
将来を見据えたキャリアアップのために転職を考える方は非常に多いため、以下のようなキャリアパスをアピールするとよいでしょう。
・入社後の研修制度
研修内容、期間など
・明確な評価制度
どのように評価を行っているか など
・中長期のキャリアプラン
ここで働いていればどのような道が開けるのか など
意外と見落とされがちですが、地域での存在意義をアピールしている事業所は少ないため、この点を言語化するだけでも強い魅力付けになり得ます。
・保護者との関係性
保護者アンケートで〇〇%の満足度、保護者さま向けの勉強会も開催している など
・関係機関との連携
学校や相談支援事業所と密に連携している、地域支援の要として機能している など
面接官によって進め方や質問内容がバラバラだと、採用判断の質も揺らぎ、応募者が受ける印象もまちまちになってしまいます。どの職員が面接官を担当しても一定の質を担保できるよう、面接の型(マニュアル化)をあらかじめ決めておくことが大切です。そのための6つのポイントをご紹介します。
■Point 1:面接官に必要な3つの心構え
■Point 2:面接の事前準備と来所対応
■Point 3:面接の流れと進め方
■Point 4:応募者へ必須の確認項目リスト
■Point 5:面接官がやってはいけないNG行動
■Point 6:+αで差がつく「魅力付け」の工夫面接官に必要な心構えとして、以下が挙げられます。
心構え | ポイント |
|---|---|
客観的な見極め | 感情に左右されず、採用基準に沿って冷静に判断する。人柄・経験・希望条件などに、お互いズレがないかも確認する |
自社の魅力付け | 面接は「選ぶ場」だけでなく、自社が求職者に「売り込む場」でもあると認識する。自社ならではの魅力を言葉にして伝える |
“法人の顔”の自覚 | 面接官の振る舞いが法人全体への印象を決めることを理解する。代表者の立場として、法人・事業所のファンを作る姿勢をもつ |
事業所全体で歓迎ムードを作ることが、応募者の第一印象を大きく左右します。そのため、「来所時には全職員が笑顔で挨拶するように意識する」「面接官の遅刻やリスケジュールをなくす」ことなどが重要です。
また、名刺・パンフレット・筆記用具の用意、清潔な面接スペースの確保などの事前準備もしっかりしておきましょう。見学ルートや紹介する職員、説明する内容を事前に決めておくなど、事業所見学のルール化も重要です。
面接の流れと進め方のポイントは以下の通りです。
●面接の基本フロー(約1時間想定)
時間配分 | 項目 | 目的 |
|---|---|---|
5分 | アイスブレイク | 「評価する側・される側」という壁を取り払い、対話の土壌を整える |
10分 | 法人・事業所の説明 | 理念やビジョンなどを伝え、「ここで働く理由」を動機づける |
10分 | 経歴・スキルの確認 | 履歴書や職務経歴書をベースに事実確認と深掘りを行う |
15分 | 人柄の確認質問 | 価値観・考え方・チームへの適合性を確認する |
5分 | 条件のすり合わせ | 給与・勤務時間・休日などの齟齬がないかを最終確認する |
10分 | 質疑応答 | 応募者の疑問に答え、不安を「期待感」に変える |
5分 | 今後の流れの説明 | 選考結果の連絡方法や時期を明示し、丁寧な印象で締めくくる |
笑顔での挨拶と自己紹介を行い、来所への感謝を伝えます。「今日はリラックスしてお話ししましょう」などと声をかけ、趣味や来訪手段など答えやすい話題から始めると、その後の対話がスムーズになります。
パンフレットを読み上げるのではなく、「なぜこの事業を行っているのか」という支援への想いやこだわりを語ることがポイントです。現場の雰囲気や、いま取り組んでいる課題についても正直に話すことで、誠実な印象を与えられます。
履歴書などの内容を深掘りし、「どんな役割を担い、どんな工夫をしてきたか」を具体的に聞きます。異業種からの転職者の場合は、「これまでの経験が福祉の現場でどう活かせるか」という視点で話を聞くと、応募者自身の気づきにもつながります。
スキルだけでは見えない価値観や考え方を確認する時間です。「一番嬉しかったエピソード」や「困ったときの対応」など、行動特性が見える質問を用意しておきましょう。相手の話を否定せず、受容的な態度で聞くことで、より深い価値観を引き出せます。
給与・勤務時間・休日など、応募者が聞きづらいからこそ事業所側から積極的に提示し、不明点を解消します。現職の退職見込み時期も確認し、入社後の具体的なイメージを共有しておきましょう。
「何でも聞いてください」と伝えるだけでは質問は出にくいため、具体例を交えて聞きやすい雰囲気を作ることが大切です。また、応募者の質問内容からは、相手が重視しているキャリアや人間関係、働き方などが見えてきます。
「いつまでに、誰が、どの方法で連絡するか」を明確に伝えます。最後に、面接に来ていただいたことへの感謝を改めて伝えるようにしましょう。
面接官の主観や相性に採用判断が左右されないよう、「応募者へ必ず確認したい項目をリスト化」しておくことをおすすめします。
●応募者への確認項目リストの例
確認項目 | 観点 | 質問例 |
|---|---|---|
勤務条件の確認 | 土日祝日の出勤可否、勤務時間帯の希望などが募集条件と一致しているか | ・当事業所はシフト制で、基本的には土日祝日も勤務日となりますが、出勤できますか? |
支援方針との一致度 | 当事業所の支援スタンスに納得しているか | ・当事業所では〇〇というスタンスを大切にしていますが、率直にどう感じられますか? |
組織風土への適応力 | 規律や記録・共有のルールが比較的多い環境に違和感なく溶け込めそうか | ・当事業所では支援の質を一定に保つために、細かな記録や共有のルールを大切にしていますが、そうした環境で働くことについてどう思われますか? |
学び・成長意欲 | 経験年数より「学び続ける姿勢」を重視する文化に合っているか | ・最近、仕事やプライベートにかかわらず新しく学んだことや成長したエピソードはありますか? |
チームで働く力 | 個人プレー志向ではなく、報連相や協働を自然に行える姿勢があるか | ・判断に迷ったとき、上司にどのように相談されますか? |
応募者の志望度を大きく下げてしまう、次のような行動には注意が必要です。
■ 面接に遅刻する、無断で時間を延長する
■ 腕組みをする、頬杖をつく
■ 面接中に何度もスマートフォンや時計を気にする
■ 相手の話・考え・経験を否定する
■ フランクすぎる表現や雑な言葉づかいを使う
■ 横柄な態度をとる
■ 無愛想・無表情で目を合わせない厚生労働省では、採用選考時に配慮すべき事項として、以下の14項目を明示しています。これらを応募用紙などに記載させたり、面接で尋ねたりすることは、就職差別につながるおそれがあるので注意しましょう。
本籍や出生地に関すること
住宅状況に関すること
家族に関すること
生活環境や家庭環境などに関すること
宗教に関すること
人生観や生活信条などに関すること
思想に関すること
購読新聞や雑誌、愛読書などに関すること
支持政党に関すること
尊敬する人物に関すること
労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
身元調査などの実施
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
※参照元:「採用選考時に配慮すべき事項」厚生労働省
Point 1~5の「面接のマニュアル化」ができたあと、可能な範囲で構いませんので、応募者の志望度をより高めるための+αの取り組みも検討してみましょう。
面接官自身が「ここで働く理由」や「やりがいを感じる場面」を正直に語ることは、想像以上に強い魅力付けになります。面接官の人柄や価値観が伝わることで、「この人と一緒に働きたい」という気持ちが生まれやすくなります。
早めに合否を連絡することは、応募者への最大の誠意の示し方です。面接後の求職者は不安な状態にあるため、可能な限り早く結果を伝えることを心がけましょう。併願先のスケジュールの都合がある場合も、極力希望に合わせて調整する姿勢が信頼につながります。
オファーレターとは、内定通知書だけでは書ききれない詳細な条件や待遇などの説明と、「あなたにぜひ入社してほしい」というメッセージをまとめた文書のことです。特別感を演出しやすく、「歓迎している」という姿勢をしっかり伝えることができます。
障害福祉業界の採用難が続くなかで、「面接の質」は以前にも増して重要な意味をもつようになっています。面接は応募者を見極める場であると同時に、事業所が応募者から選ばれるための場でもあります。
応募者と対等な立場で、誠実に向き合う
自社ならではの魅力を4つの切り口から言語化しておく
誰が面接官を担当しても一定の質を保てるよう、フローと確認項目をマニュアル化する
スピード感ある連絡やオファーレターなど、+αの工夫で差別化する
これらを1つひとつ積み重ねることで、面接力・採用力は着実に高まっていきます。まずは明日からできる小さな改善から、事業所の採用体制を見直してみてはいかがでしょうか。
以上、応募者に選ばれるための面接の基本や進め方のポイントなどについて解説してきました。
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